いまだに現役で名を連ねる旧ソ連製戦車の威力は?

 陸軍部隊の中でも特に目につくのが、特殊部隊の巨大さだ。9万人弱に上り、「特殊作戦軍」と呼ぶ独立組織まで編成するが、これほど大所帯の特殊部隊は他に類を見ない。

 韓国軍の背後でテロ・ゲリラ活動を大々的に行う不正規戦が主任務で、要人の暗殺・誘拐も得意とするなど、韓国軍にとって手ごわい相手である。近代装備に勝る韓国軍には、「核兵器」「特殊部隊」の二枚看板で対抗する、というのが北朝鮮軍の基本戦略と言える。

 主要装備に目をやると、大半が半世紀以上前の代物で、某ミリタリー雑誌記者は「軍全体が“動く軍事博物館”だ」と皮肉る。

 主役の戦車を見ると、総数は3500台で韓国の2100台を大きく上回るが、中身は旧ソ連製のオンパレードで、第2次大戦時に活躍したT-34がいまだに現役で名を連ねる。同車はナチス・ドイツ軍の名戦車、パンターやティーガーと戦火を交えた傑作車で、こんなビンテージカーを戦力として重宝している国は他にないだろう。

 他にも、1950年代に開発のT-54/55や、同車の中国ライセンス生産版の59式、1960年代に量産を始めたT-62など“骨董品級”が揃っている。旧式車両が多いと保守・点検に「手間・ヒマ・コスト」がかかる反面、稼働率は下がるためかなり非効率。加えて一定台数は「部品取り」に回されるため、実際に動く戦車は相当少ないのではと見られている。

 しかも国連の経済制裁と外貨不足で、燃料の調達にも苦労しているようで、必然的に戦車の操縦訓練も割愛せざるを得ないという。もちろん、現代の戦車戦では必須な、照準や射撃などで使用する先端の電子装置が完備されているとも思えない。

 何とか現代戦で通用するのは、旧ソ連製のT-72くらいで、それでもデビューから半世紀以上たつ旧式戦車である。ちなみに同車の改造型がウクライナ戦争で多数使用されている。

 この他、T-72を基に北朝鮮が開発した「千馬(チョンマ)」や、アメリカのM1の“完全コピー戦車”が軍事パレードなどに登場しているらしいが、詳細は全く不明で、量産されている様子もない。前出のミリタリー雑誌記者は、「パレードなどで引き回されるだけの“山車”のような存在で、単なるハッタリではないか」と分析する。

北朝鮮の軍事パレード北朝鮮の軍事パレード(写真:KCNA/UPI/アフロ)

 一方、2万門超という砲兵戦力は圧倒的で、韓国軍のほぼ2倍に達する。大砲(榴弾砲)や迫撃砲、多連装ロケット・システム(MRL)の合計だが、特にMRLの数が5500基と驚異的である。

 韓国に攻め込む際、まず韓国の総人口の半分、2600万人がひしめくソウル首都圏に集中砲撃を加え、パニックを起こさせるつもりなのだろうか。砲兵部隊の強化にはことさら熱心だ。