- 反イスラエルを訴えるデモが全米の大学に拡大し、コロンビア大では警察が突入する騒ぎにまで炎上しているさなか、原油価格は3月中旬以来の安値となった。
- 米国内で逆風を受けるバイデン政権がイスラエル・ハマスの仲裁に本腰を入れていることで、中東情勢の緊迫化が避けられるとの期待が背景にある。
- イスラエルとサウジアラビアの国交を正常化させたい米国は、サウジとの防衛条約締結に向けた交渉を加速させているが、そこには地政学的なリスクも潜む。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
5月1日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比2.93ドル(3.6%)安の1バレル=79.00ドルで取引を終了した。一時は78.83ドルと3月中旬以来の安値となった。
原油価格が大幅に下落した主要因は、米国の原油とガソリンの在庫が市場予想に反して増加したことだ。「米国の石油需要が伸び悩んでいる」との見方から「売り」が広がった。
米連邦準備理事会(FRB)が政策金利を6会合連続で据え置いたことも災いした。高金利の長期化懸念が原油相場の重荷となっている。
一方、原油価格を下支えしてきた中東情勢の緊迫化への懸念は後退している。
原油価格は世界市場の需給バランスで決まるのが基本だ。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
ロイターによれば、石油輸出国機構(OPEC)の4月の原油生産量は前月比11万バレル減の日量2649万バレルだった。イラクとナイジェリアの減産が全体の生産量の減少に貢献した。
OPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは原油価格を下支えするため、今年1月から日量220万バレルの自主減産を実施しているが、4月に入り、自主減産の効果がようやく出てきたようだ。
だが、自主減産を主導するサウジアラビアのダメージは大きくなるばかりだ。