- イランとイスラエルの報復合戦には「手打ち」感が漂い、原油価格は1バレル=80ドル台前半で推移している。
- だが、フーシ派に代表されるイランの「代理勢力」は活動を活発化させており、むしろイスラエルとの国交樹立交渉を続けるサウジアラビアへの攻撃リスクは高まっている。
- 米バイデン政権はパレスチナ国家樹立と引き換えにイスラエルとサウジアラビアに国交を樹立するよう働きかけているとの報道もあり、両国の接近を警戒するイラン側の反応には要注意だ。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
4月24日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.55ドル(0.7%)安の1バレル=82.81ドルで取引を終了した。
「中東情勢の緊迫で原油供給に悪影響が生じる」との懸念が後退したことで、このところ原油価格は1バレル=80ドル台前半で推移している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは、原油価格を下支えするため日量220万バレルの自主減産を実施している。
「自主減産は年末まで続く」との見方が一般的だが、国際通貨基金(IMF)は19日、「OPECプラスを主導するサウジアラビアが7月から増産を開始する」との見方を示した。
サウジアラビアの現在の原油生産量は日量900万バレル、保有する生産能力よりも300万バレル低い。減産によりサウジアラビア経済はマイナス成長に陥っており、IMFは「この状況から脱するために、サウジアラビアは来年までに原油生産量を日量1000万バレルに戻し、2022年のような好調な経済を取り戻そうとするだろう」としている。
サウジアラビアの財政も「火の車」だ。そのせいで同国の実質的なトップであるムハンマド皇太子も窮地に立たされている。