- 中東で緊迫した状況が続く中、原油価格は需給の状況を反映し3月上旬以来の安値となっている。
- 難航するイスラエルとハマスの停戦協議は大詰めを迎えているが、湾岸諸国で不穏な動きが出てきている。
- ハマスに代表される「イスラム抵抗運動」が各地で活発化する気配があり、サウジアラビアは「アラブの春」の再来を警戒しはじめたようだ。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
5月8日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.61ドル(0.8%)高の1バレル=78.99ドルで取引を終了した。取引開始直後に76.89ドルと3月上旬以来の安値となった。だが、米エネルギー情報局(EIA)が公表した週間の統計で原油在庫が市場予想以上に減少したことが判明したため、買い戻す動きが広がった。
原油価格は昨年10月以降、中東地域の地政学リスクの動向に影響されているが、世界市場の需給バランスで決まるのが基本だ。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは原油価格を下支えするため、今年1月から日量220万バレルの自主減産を実施している。その期限が6月下旬に切れることから、市場では「OPECプラスが自主減産を延長するかどうか」について観測が出始めている。
米金融大手ゴールドマンサックスは8日、「OPECプラスは6月1日の会合で自主減産の方針を転換する可能性は低い」との見方を示した。OPECプラス内では「自主減産を年末まで延長する」との声も出ている。
これらが大方の見方だが、気になる動きも出ている。