イスラエルによるイランへの攻撃を受けて、19日6:00に公開した記事をアップデートしました(4/19 18:00)
- イスラエルがイランに対して報復攻撃したことで、小康状態を保っていた原油価格が高騰した。
- イエレン米財務長官はイラン産原油に制裁を科す可能性も示唆していたが、導入は見送られるのではと市場は見ていた。
- イスラエルとイランの緊張が高まるなか、湾岸産油国でもリスクが高まっている。イスラエル防衛に「加担」してしまったことで、イランやその代理勢力から攻撃される懸念がある。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
イスラエルがイランに対して反撃した4月19日の米WTI原油先物価格(原油価格)は、一時前日比で4%高の1バレル=86ドル台まで急騰した。原油価格は4月14日のイランによるイスラエル攻撃を受けて一時上昇した後、小康状態となり3月下旬以来の安値水準となっていた。中東情勢の緊迫化にマーケットが反応した形だ。
まずは、現在の原油マーケットの状況をおさらいしておこう。まずは供給面から。
中東情勢の緊迫化で原油価格が上昇することを懸念していた米ホワイトハウスは16日、戦略石油備蓄(SPR)の放出の可能性について言及した。バイデン政権は2022年、ロシアのウクライナ侵攻に起因するガソリン価格の上昇を抑えるため、半年間でSPRから1億8000万バレルの原油を放出した経緯がある。
他方、米国政府はイランに対する制裁を強化する構えだ。イエレン米財務長官はイラン制裁について、海上輸送される原油の価格に上限を設ける措置を導入する可能性があるとしている。
この措置はロシアに対して米国や日本を含むG7(主要7カ国)などが実施している制裁と同様のものだ。だが、イラン産原油の輸出が減ると、市場全体で原油価格が上昇し米国内のガソリン価格を引き上げるリスクがある。そのため、市場では「導入は見送られるのではないか」との見方が強い。
ただ、こうした制裁が実施されても、どこまで効果を発揮するかは見通せない部分もある。実際、ロシアに対する制裁の効果は供給量という面では限定的だ。G7など西側諸国が制裁を加えても、それ以外の国がロシア産原油の安さに目をつけて輸入を増やしているからだ。
むしろ、ロシア産原油に対する影響が大きかったのは、ウクライナ軍の度重なるドローン(無人機)攻撃だ。石油関連施設への攻撃が続いたことで、ロシアの製油能力は3月末に14%(日量91万バレル)失われた。しかし、これについても足元の損失幅は10%(日量66万バレル)まで縮小している*1。
*1:Russia Is Bringing Back Refining Capacity Hit by Ukrainian Drones(4月15日付、OILPRICE)