在シリアのイラン大使館への空爆に抗議するイランのデモ(写真:AP/アフロ)

今月13日から14日にかけ、イランが弾道ミサイルや自爆型ドローン(無人機)を使ってイスラエルを攻撃しました。イスラエルがシリアのイラン大使館を空爆し、イラン革命防衛隊の幹部らが殺害されたことへの報復です。イランとイスラエルは長年敵対関係にありますが、イランがイスラエルを直接攻撃したのは初めて。イスラエルの受けた衝撃は大きく、報復が連鎖する可能性もあります。イランはなぜ、イスラエル、そして米国と対立を続けているのでしょうか。イラン革命防衛隊とはどんな存在なのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

そもそもイランはなぜイスラエルを攻撃?

 イスラエルにミサイルが飛来したのは、4月14日未明でした。イスラエル軍によると、イランや周辺国から発射された無人機は170機、弾道ミサイルは120発以上、巡航ミサイルは30発以上に上ります。

 米国や英国、フランスの支援を受け、イスラエルはこれらの99%を防空システムや戦闘機で撃ち落としました。イスラエル南東部で7歳の女児が重傷を負いましたが、それ以外に大きな被害は報告されていません。

(図:フロントラインプレス作成)
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 一方、イランの「革命防衛隊」は攻撃の開始直後、限定した標的に向けて「数十のミサイルとドローン」を発射したとの声明を発表しました。イラン外務省は、在シリア大使館がイスラエルの攻撃を受けたことを理由に「国連憲章に規定された正当な自衛権を行使した」と宣言。先に攻撃を仕掛けてきたのはイスラエルだと主張したのです。

 そのイスラエルの攻撃が起きたのは、4月1日です。シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部を空爆し、革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官ら7人を死亡させました。イランは、イスラエルの攻撃と断定しています。

 イスラエルと激しく対立するパレスチナ自治区のイスラム組織ハマスは、イランと親しい関係にあります。イスラエルと交戦するレバノンの民兵組織ヒズボラも、イランと親密な関係を築いてきました。

 そしてイランは、それらの組織に武器を供給してきたとされています。イスラエルによるダマスカスでの攻撃は、そうした“反イスラエル”の動きを阻止する狙いがあったとみられます。