JR北海道の根室線富良野―新得間が最終運行日を迎え、JR富良野駅を出発する臨時列車=3月31日撮影(写真:共同通信社)

鉄道の廃止が続く北海道で、この4月1日にまた新たな鉄道路線が廃止になりました。JR根室本線の富良野―新得間で、北海道開拓や日本経済の発展を下支えした117年の歴史に終止符が打たれたことになります。

国鉄の分割民営化によって誕生したJR各社のうち、北海道、四国、九州のJR3社は計1兆2000億円を超す「経営安定基金」の運用益を利用し、鉄道事業の赤字を埋めていくはずでした。ところが、上場を果たしたJR九州を除き、目論見通りに物事は進まず、JR北海道とJR四国の疲弊は年々深まるばかりです。

そもそも「経営安定基金」とは何だったのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

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「北の国から」の聖地も廃止

 JR北海道の根室本線は、道央(札幌など)と道東(帯広・釧路など)の道東を結んでいます。札幌から帯広が鉄道路線でつながったのは、明治時代の1907年のこと。石炭や農産物、水産物などの輸送を担っていました。

 その根室本線のうち、廃止になったのは富良野―新得間の81.7キロで、同本線の全線が営業を取りやめたわけではありません。廃止された駅には、ドラマ「北の国から」でロケ地となった駅もあります。

 赤字路線をどうするかという方針を示したJR北海道の「当社単独では維持することが困難な線区について」(2016年)によると、富良野―新得間の平均乗車人員は1列車あたりたった11人です。それに対し、収入を「100」とした場合に必要な費用は「1854」にも達しました。

 とくに大きいのは、設備の維持更新にかかる費用で、実額で算出すると、今後20年間で災害復旧費用を除いて22億円が必要です。「通学や通院に欠かせないから」「歴史があるから」「地域発展につながるから」などの理由があったとしても、おいそれと存続にゴーサインを出せる状態ではありません。

 JR北海道はこの方針に基づき、2020年には札沼線・北海道医療大学―新十津川間(47.6キロ)、2021年に日高線・鵡川―様似間(116.0キロ)、2023年に留萌線・石狩沼田―留萌間(37.1キロ)などを次々と廃止してきました。

留萌線も一部区間で運行を終了した(写真:共同通信社)

 いずれの路線も著しい過疎化が進んだエリアを走っており、乗客が極端に少ない一方、路線・設備の老朽化や除雪にかかる費用がかさみ、民間会社の事業としては成り立たないためです。

 ただ、都市部に比べて人口が少なく、土地が広い北海道では、そもそも鉄道事業が単体では成り立たないことは、国鉄の分割民営化が行われた当時から十分に予想されたことでした。そのため経営が困難になると見込まれた北海道、四国、九州の“JR3島会社”に経営安定基金が用意されたのです。