- 中東情勢が一段と緊迫してきた。ロシアの製油能力の一部喪失の影響も大きく、原油価格が上昇。「100ドル超え」もあり得るかもしれない。
- イラン、もしくはその代理勢力が近日中にイスラエルに大規模攻撃を仕掛けるとの警戒感も高まっている。
- ホルムズ海峡が封鎖される可能性も出ているほか、イスラエルと国交を結んでいるアラブ首長国連邦(UAE)の石油関連施設が標的にされる懸念もある。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
4月10日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.98ドル(1.1%)高の1バレル=86.21ドルで取引を終了した。「中東情勢が悪化し、同地域からの原油供給に悪影響が及ぶ」との見方から「買い」が入った。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きをアップデートしておこう。
ウクライナ軍の製油所へのドローン攻撃はロシア経済に大きな打撃を与えている。
製油能力の14%が失われたことでロシアのガソリン価格が上昇し、経済全体のインフレ圧力が高まっている。だが、西側諸国の制裁のせいで修理に必要な設備・部品が調達できず、製油所の操業再開が遅れる可能性が高まっている*1。
*1:Russia Is Struggling To Repair Refineries Due To Sanctions(4月5日付、ZeroHedge)
ロシアはやむなくカザフスタンからのガソリン輸入を検討し始めており*2、ガソリンの需要期を前にロシアが他国からのガソリン輸入を本格化させれば、原油価格にも上昇圧力がかかることになるだろう。
*2:ロシア、カザフからのガソリン供給を模索 不足に備え(4月8日付、ロイター)
「泣き面に蜂」ではないが、ロシアとカザフスタンの国境周辺地域で大規模な洪水が発生したことも気がかりだ。ロシアの主要石油生産地である西シベリアのチュメニ地域にも非常事態が宣言されたからだ。70年ぶりの大洪水により同地域での原油生産が滞る事態になれば、世界の原油市場に大きなインパクトを与える可能性が高い。
供給懸念の材料はロシアばかりではない。