2024年の春闘では高水準の回答が続いている。連合の第2回集計(3月21日)によると、前年同時期比5.25%(1446組合、定昇相当込み賃上げの加重平均)。年齢に応じて上がる定昇分は1.7~1.8%なので、賃金カーブ全体を一律に引き上げるベースアップで3.5%程度が実現している状況だ。
一方、昨年の春闘では3.60%の賃上げが実現したものの、これまでのところは物価の上昇に賃上げが追いつかず、物価の影響を除く実質所得は減り、消費は低迷している。
企業による積極的な賃上げが2年続き、いよいよ今年は実質所得が増えて消費の持ち直しにつながるのか、また、今後も賃上げは継続していくのか。労働市場に詳しいニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長に話を聞いた。
企業は横並びで「賃金据え置き」から横並びで「賃上げ」へ
──斎藤さんはかねて政府が2%のインフレ目標を設定しているのだから、賃上げは4%以上にならないと定昇を除いた実質賃金は下がってしまう、労働組合は4%以上の賃上げを目指すべきだと主張していました。ようやく、それが現実のものになってきましたね。
斎藤氏(以下、敬称略):率直に言って今年、ここまで高水準になるとは思っていませんでした。私は4%にはなるとみていましたが、30年ぶりの春闘賃上げ率を実現した昨年の水準3.60%を、今年は下回ると予想していたエコノミストもいました。2年続けて大方のエコノミストの予想を上回る賃上げとなっています。
──組合側の要求というより、企業がより積極的でした。
斎藤:昔は、横並びで上げないという行動でコストカットを優先しましたが、今は横並びで上げています。人手不足ですから、そうしないと人材が確保できません。
──このような高水準の賃上げは持続可能でしょうか。
斎藤:持続の意味が昨年とは異なってきていますね。ベースアップが続くという意味では持続可能ですが、5%は高すぎると思います。5%ということは定昇分を除くベアが3.5%程度です。持続的な物価の上昇を2%とみるかは議論がありますが、政府と日本銀行が目指しているので仮に2%とすると、実質賃金上昇率は1.5%ということになります。
高度経済成長時代なら1.5%は持続可能でしたが、今の日本の潜在成長率は0~1%なので、飛躍しすぎでしょう。ただ、今年は、昨年から物価が賃上げ以上に上がりましたから、足りない分をカバーしているという面があると思います。3.5%で実質賃金上昇率はゼロですから、来年以降は4%台あればプラスの実質賃金が維持できて持続可能です。
──足元では消費者は賃上げを物価の上昇が上回り、消費の低迷が続いています。今年は逆転が可能でしょうか。