異次元緩和の修正を決めた日銀の植田総裁(写真:共同通信社)異次元緩和の修正を決めた日銀の植田総裁(写真:共同通信社)
  • 日本銀行は11年続いた異次元緩和政策の修正を決めた。
  • だが、ゼロ金利、低賃金という金融緩和環境の下、日本の成長力は大きく損なわれた。
  • そもそも構造改革に踏み切らず、金融政策に頼った政策は正しかったのか。

(大崎明子:ジャーナリスト)

 日本銀行は3月19日に11年続いた異次元緩和政策の修正を決定した(実施は21日から)。政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用する政策をやめ、無担保コールレート(オーバーナイト)の誘導を0~0.1%のレンジにし、マイナス金利政策から脱却する。

 YCC(イールドカーブコントロール政策、長期金利誘導目標による長短金利操作)も終了し、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れもやめる。コマーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れ額も段階的に減らし、1年をメドに終了するとした。

 国債についてはこれまでとおおむね同程度の金額の買い入れを実施し、また長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に買い入れ額を増額するとして、長期金利の安定化を図る姿勢を明確にした。

 一方で、日銀の植田和男総裁は会見で、大規模緩和の終了を踏まえて、将来は段階的にバランスシートの規模を縮小すると表明したが、いつから開始するかは現時点では言えないとした。

日銀の政策が奏功したわけではない

 植田総裁は異次元緩和を終了する理由として、「賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきた」「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」とした。春闘の賃上げが想定以上に好調なことを受けたものだ。

 さらに、「大規模な金融緩和政策はその役割を果たした」としたが、これは牽強付会ではないだろうか。

 実際には、「物価」は日銀の大規模かつ長期にわたる金融緩和では動かなかった。日銀が本来目指したのは、低金利によって投資や消費といった需要を喚起することによって物価が上昇する「好循環」であるが、そうした効果は実現できなかった。

 日本の物価を動かしたのは、皮肉にもコロナ禍をきっかけとするサプライチェーンの分断や地政学的な世界のブロック化によるコスト高など「輸入物価の上昇」を起点とするもので、さらに円安がそれを促進する悪い物価上昇だ。

 それが人手不足を背景に賃金をも上昇させたことはプラスだが、要するに供給不足が原因だ。