- 日銀によるマイナス金利の解除に焦点が当たっているが、マイナス金利の解除後、連続利上げがあり得るのかどうか。
- その判断材料になりそうな要素が今年の春闘である。春闘に関する市場予想は昨年の水準を上回っており、25bpずつの連続利上げも可能性は残る。
- だが、今はデフレからインフレに切り替わる過渡期。名目賃金上昇という好循環の芽を摘まないために、緩和政策を維持するのではないか。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
厳しい情勢の個人消費
3月12日行われた参議院財政金融委員会で、日銀の植田総裁は3月18~19日会合について、「今週、追加的なデータや情報が入ってくると思う。総合的に判断、点検し、適切な判断を下していきたい」と述べた。
無論、「今週入ってくる追加的なデータや情報」とは12日から15日にかけて順次上がってくる大企業の春季労使交渉(以下春闘)の仕上がりを指している。
このほか植田総裁は「一部の統計に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している」と述べ、個人消費の弱さに言及したが、これは賃上げによってカバーされてくるとの認識も口にしている。
実際、直近データである10~12月期の個人消費は前期比▲0.3%と3期連続のマイナスであり、植田総裁の指す「弱めの動き」は危うい情勢にある。結局、日銀の景気認識は春闘次第と言わざるを得ない。
片や、10~12月期は設備投資が前期比▲0.1%から同+2.0%へ3期ぶりの増勢に復帰したことで、「国内投資に勢いが出てきた」(植田総裁)という評価も可能になってはいるが、個人消費がここまで失速する中、利上げの判断は間違いなく議論を呼ぶだろう。
通年の仕上がりを見ても、個人消費(≒家計最終消費)ひいてはGDP成長率の名実格差が非常に大きくなっており、インフレに押されて実体経済が抑圧されている状況は認められる(図表①)。この状況で賃金・物価の好循環を謳い上げるのはかなり難しいというのが実情だろう。
【図表①】