- 好調な米国経済を背景に、日米の株高が続いている。
- その中でも、日本の株高を牽引しているのは円安とインフレだ。
- 円安を原動力としたインフレは日本の実体経済を確実にむしばむ。
(大崎 明子:ジャーナリスト)
日本の株高は円安インフレによるもの
年明け以降、日米共に株価の上昇が続いている。
まず、米国経済の強さがある。2023年10~12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率3.3%増と市場予想を上回った。一方でインフレ率はPCE(個人消費支出)コアで見て2%台で低下傾向だ。長期金利も下がってきて、このところは4%前後で安定している。
そのため、1月31日のFOMC(連邦公開市場委員会)ではFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が3月の利下げはないとしたものの、次は利下げという方向転換を明らかにした。目先は株式市場の堅調が続きそうだ。
もちろん、いつまでも株価が上昇を続けるという過度な期待は禁物だ。景気の先行きについては、「ソフトランディング」(軟着陸)ならぬ「ノーランディング」(無着陸)とまで言われだしたが、ノーランディングなのであれば、再びインフレが加速するだろう。
そうなれば、利下げの話は遠のくどころか、再び利上げの議論が出てくるかもしれない。
1月分の雇用統計はその可能性を感じさせるものだった。失業率は3.7%で上がらず、非農業部門雇用者数は前月比35.3万人に拡大。平均時給も上昇して労働需給が再び逼迫する兆しがある。
日本の株価上昇は外国人投資家に牽引されている。
その理由は、日本経済がデフレやディスインフレといった状態からインフレに転換して現預金の価値が下がっていく経済になったこと、円安によって外国人から見て日本株に投資しやすくなったこと、円安の進行で日本を代表するグローバル企業の株価が上昇しやすいことがある。
つまり、原動力は円安とインフレだ。中国が政治的・経済的理由から魅力的な投資対象ではなくなったという要因もある。
ただ、周知のとおり、新NISAの導入に応じた日本人の株式投資は、その多くがS&P500指数に連動するファンドや世界株式に投資するファンドに向かっており、対外投資のほうが多い。
投資家にとって、東京証券取引所による改革や関連する日本企業の取り組みへのプラスの評価などはまだ「期待」にすぎない。外国人投資家も期待外れだと思えば、ブームは長続きしないだろう。