不動産価格が高騰する中、住宅ローン残高も増大している。写真は晴海フラッグ(写真:共同通信社)不動産価格が高騰する中、住宅ローン残高も増大している。写真は晴海フラッグ(写真:共同通信社)
  • 最新の資金循環統計を見ると、株式・出資金や外貨性資産の比率がじわじわと上昇している。政府が旗を振る「貯蓄から投資」の影響だ。
  • 縮小傾向にある民間部門の貯蓄過剰もインフレ圧力だが、政府債務に加えて膨らむ住宅ローンの存在も無視できず、連続利上げは簡単ではなさそうだ。
  • だが、金利の上昇を抑えれば、通貨安が進むだけ。金利上昇で返済負担が増えるのも、円安で一般物価が上がるのも、家計部門の所得環境を毀損するという意味では同じだ。

(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

外貨比率も株比率も過去最高目前

 ドル/円相場は年初来高値圏での取引が続いている。依然としてマイナス金利解除との関係性や為替介入の可能性を問うような論調が支配的だが、3月21日に公表された2023年12月末時点の資金循環統計を元に家計金融資産の構成状況を整理しておきたい。

 過去のコラムでも何度か論じているように、「資産運用立国」政策と円安・株高の関係性が注目される中、資金循環統計の変容は日本の経済・金融情勢を考える上で極めて重要な分析対象となりつつある。

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 既報の通り、2023年末の家計の金融資産残高は2141兆円と過去最高を更新した(図表①)。

 構成を見ると、95%以上が円貨性の資産、特に現預金(外貨預金を除く)が50%以上とホームアセットバイアスの強さは依然として健在である。だが、その円貨性資産も「貯蓄から投資」の胎動が見られており、株式・出資金の比率が12.9%と2期連続で過去最高タイを記録している。

【図表①】


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 今年1~3月期の日本株の盛り上がりを踏まえれば、次回公表の2024年3月末時点では過去最高比率が更新されている可能性は高い。

 片や、円安との関係で注目される外貨性資産の比率は前期の3.5%から3.7%へ上昇しており、2007年12月末に記録した過去最高水準(3.9%)を視野に捉えている。