下落が進んでいるウクライナのフリヴニャ相場(写真:Sputnik/共同通信イメージズ)下落が進んでいるウクライナのフリヴニャ相場(写真:Sputnik/共同通信イメージズ)
  • 管理相場に移行したウクライナだが、通貨・フリヴニャ相場の下落が進んでいる。
  • 統計上、ウクライナのインフレは収まりつつあるが、戦地や戦地に近い地域の実態がどこまで統計に反映されているのかは定かではない。
  • 中央銀行が考える以上に、ウクライナの金融政策は経済の実勢に比べて緩和的なのかもしれない。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ロシアによる侵攻を受けた2022年2月24日以降、ウクライナ国立銀行(中央銀行)は同国の通貨フリヴニャの対米ドルレートを、1米ドル=25.2549フリヴニャに固定した(図表1)。

 さらに同年7月21日、ウクライナ国立銀は1米ドル=36.5686フリヴニャに対米ドルの固定レートを切り下げ、それ以降、このレートを維持し続けた。

【図表1 フリヴニャの対米ドル相場】

(出所)ウクライナ国立銀

 2023年7月、ウクライナ国立銀は戦後復興を見据えて、為替レートを徐々に自由化する方針を示した。そして10月、国立銀は固定相場制を緩和し、管理相場制に移行した。

 国立銀は管理相場に移行した理由として、ディスインフレが進んだほか、外貨準備高が潤沢であることから、フリヴニャ相場の安定が見込まれることを挙げた。

 そうしたウクライナ国立銀の説明とは裏腹に、管理相場制に移行して以降、フリヴニャ相場の下落が進んでいる。

 フリヴニャ相場の下落が進んでいるということは、ウクライナ国立銀の金融政策が経済の実勢に比べると緩和的であることに加えて、為替相場において、ウクライナの経済のぜい弱性が意識されているということにほかならない。

 次ページ図表2にあるように、ウクライナの政策金利(キーポリシーレート)の動きを確認すると、ウクライナ国立銀は2022年6月に政策金利を25%に引き上げた後、それを維持し続けてきたが、2023年7月に利下げに着手し、政策金利を22%に引き下げた(図表2)。

 その後も国立銀は追加利下げを進め、2024年3月までに政策金利を14.5%に引き下げている。