- 欧州連合(EU)の執行部局、欧州委員会は次世代原発の一つ、SMRの普及を目指すため新たな官民連合プラットフォームを結成した。
- その背景には、脱原発を推進してエネルギー供給が不安定化したドイツと、原発を残したフランスのパワーリバランスがある。
- 「脱炭素化」の切り札として注目を集めるSMRには、韓国をはじめ各国が開発に乗り出しているが、果たして日本はどうか。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は2月9日、次世代の原発である小型モジュール炉(Small Module Reactor, SMR)の普及を目指すべく、新たな官民連合プラットフォーム「SMRに関するヨーロッパ産業同盟」を結成すると発表した。脱炭素化を推進するために原子力による発電を強化することが、その主な狙いだ。
SMRの特徴は以下のように整理できる。
まずSMRは、その名の通り、従来型の原子炉に比べると小型であり、出力が低い。1基当たりの出力はおおむね300MW以下と、従来型の1000MW級の大型原子炉の半分以下。小型であるがゆえに整備がしやすく、事故が起きた際も自然に冷える部分も多く、冷却しやすいという特徴がある。
また、従来型の大型原子炉は設置までに、土地の選定・取得や設備の建設などで多大なコストを必要とするが、モジュール(ユニット)で構成されるSMRはレディメイドで建設できるため、従来型の原子炉に比べると、金銭面・時間面両方のコストが少なくて済む。
同様に、モジュールの利点を活かせば、離島や僻地、極地など送電網が整備されていない地域でも設置できる。再エネ発電のバックアップ電源に加えて、水電解による水素の生成に必要な電力や他の産業への熱供給に利用できる可能性もある。
このように、従来型の原子炉に比べるとSMRは多くのメリットがある。
そうしたSMRの開発を各国は競っているが、現状ではまだ実用段階には至っていない。2023年11月には、SMR開発で先行する米ニュースケール・パワー社によるSMRプロジェクトも、開発コストがかさむことを理由に中止を余儀なくされた。
とはいえ、SMRへの期待は根強く、EUはプラットフォームを結成する運びとなった。