- 4月13日からドイツのショルツ首相が中国を公式訪問する。その目的は、トップセールスだ。
- EUの欧州委員会は中国製のEVが域内市場を席巻することを懸念しているが、EUと加盟各国との間で対中姿勢の足並みの乱れが目立つ。
- ドイツでも中国からの撤退を考える企業が増えているが、その中でショルツ首相の訪中はどういう意味を持つのだろうか。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ドイツのショルツ首相が4月13日より、ウィッシング運輸・デジタル相ら閣僚3名と企業トップらを率いて中国を公式訪問する。ショルツ首相の訪中は2022年11月以来であり、翌2023年7月にドイツ政府が中国からの「デスキリング」を図ることを明確に示した対中戦略を掲げてからは、初めての訪問である。
複数の閣僚が首相の外遊に帯同するのは異例のことだ。訪中の目的はもちろんトップセールスにある。
今回、ショルツ首相の訪中に帯同する3閣僚は親中派とされている。例えば、ウィッシング運輸相は、第5世代の通信網(5G)から中国の華為技術(ファーウェイ)製の機器の利用を制限しようとする動きに反対し続けてきたことで知られる。
そもそもショルツ政権の中で中国に対して強硬な立場を取っていたのは、連立2位の環境政党、同盟90/緑の党(B90/Grüne)。ショルツ首相を擁する連立1位の社会民主党(SPD)やウィッシング運輸・デジタル相が属する連立3位の自由民主党(FDP)は産業界の声に配慮し、中国に対して融和的な姿勢を取っていた。
それでは、このタイミングでショルツ首相が親中派の閣僚と共に中国を訪問したことは、いったいどのような意味を持つのだろうか。
一つに、ショルツ連立政権内におけるB90/Grüneの影響力の低下があると考えられる。一時は支持率が2位に上昇したB90/Grüneだが、足元の支持率はSPDを下回る4位にまで後退しており、党勢の後退が顕著である。
ショルツ政権のハーベック副首相兼経済・気候相とベアボック外相はB90/Grüneを代表する政治家であり、ショルツ政権の発足時には高い人気を誇ったが、今ではともに評価を下げている。B90/Grüneの影響力が閣内でも低下したことで、政権の親中派が中国に秋波を送りやすくなったことは間違いないだろう。