イランの本音は「米国と全面対決したくない」

 2020年1月にはイランは極めて危機的な状況を迎えます。イラクの首都バグダッドの空港近くで、米軍は革命防衛隊の「コッズ部隊」を率いていたガセム・ソレイマニ司令官を無人機で殺害したのです。

 トランプ氏は、ソレイマニ司令官が米軍や米外交官への攻撃を計画していたと正当性を主張しましたが、イランでソレイマニ司令官は「国民的英雄」と慕われており、激しい反発が起きました。ただ、イランは反撃を小規模にとどめ、イラクにある米軍基地をミサイルで攻撃しただけ。それ以上の報復は控え、全面衝突には至りませんでした。

 今回のイスラエル攻撃に関しても、イランには米国との衝突は避けたいとの思惑があったとみられます。

 大量に発射した無人機はイスラエル到達までに数時間かかり、イスラエル軍が迎撃態勢を取りやすくしたと言われています。しかもイランの国連代表部は到達前に「(攻撃は)これで終結したとみていい」とのメッセージをX(ツイッター)に投稿しました。

 一部報道によると、イランは事前に米国に対して報復は「限定的」であると伝えていたようです。イラン国内の強硬派を抑えるためにイスラエルを攻撃するけれども、その後ろ盾の米国と全面対決したくはなかったのでしょう。