イランは2024年4月14日未明、イスラエルに対して無人機、巡航ミサイル、弾道ミサイルによる攻撃に踏み切った。
イスラエルとイランは歴史的な敵対関係にあるが、今回の攻撃は、イランによるイスラエルに対する初の直接攻撃である。
イランは、今回の攻撃は4月1日に行われた在シリアのイラン大使館領事部ビルに対する空爆への報復だとしている。
イスラエル軍報道官によると、攻撃には無人機約170機や巡航ミサイル30発以上、弾道ミサイル120発以上が使われた。
イランだけでなくイラクやイエメン領内からも発射された。イスラエル軍は「99%」を迎撃し、弾道ミサイルの一部が着弾したと発表した。
米ABCニュースによると、少なくとも弾道ミサイル9発が着弾し、ネバティム空軍基地など2か所の基地に落下した。輸送機1機や使われていない滑走路などに軽微な被害が出たという。
イスラエルメディアによると、南部では少女がミサイルの破片で重傷を負った。
99%の撃墜率は驚きの数字である。
イスラエルはよく知られた地上発射型の防空システム「アイアンドーム」をはじめ様々な防空システムを配備しているが、これだけでは99%の撃墜率は無理である。
これには米・英・仏・ヨルダン軍の迎撃作戦への参加がある。
米中央軍は80以上の無人機と少なくとも6発の弾道ミサイルを破壊したと明らかにした。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、米軍は戦闘機や地中海東部に展開した駆逐艦、イラクに駐留する防空部隊が迎撃した。
英BBCやロイター通信などによると、英軍の戦闘機は地中海のキプロスから出撃し、イラクやシリア上空で無人機を迎撃したほか、フランスも迎撃作戦を支援した。
ヨルダンはイスラエルに向けて飛行中に自国の空域に入った飛行物体を撃墜した。
日本時間の15日に国連の安全保障理事会の緊急会合が開かれ、アントニオ・グテーレス事務総長は冒頭、「中東の複数の戦線で大規模な軍事衝突につながりかねないいかなる行動も避けることが極めて重要だ。中東にとっても世界にとってもこれ以上の戦争は許されない」と述べ、イランとイスラエルの双方に最大限の自制を求めた。
しかし、イスラエルのギラド・エルダン国連大使はイランを激しく非難し「今回の攻撃は越えてはならない一線を越えた。イスラエルには報復する法的権利がある」と主張し、対抗措置をとる可能性を示唆した。
これに対してイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使は「安保理決議や国際法の義務を無視してより残虐な犯罪を犯しているのはイスラエルだ」と反論し、双方が互いを激しく非難した。
イランによる攻撃を受けて、イスラエルでは14日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が戦時内閣の閣議を開いて対応を協議した。
ロイター通信は、対抗措置をとる方針は支持されたものの、時期や規模については意見が分かれたと報じた。
米国のバイデン政権の高官は14日、記者団に対し、イランによる報復攻撃を受けてイスラエルがどのような対応をとるかはイスラエル自身が決めることだと述べた。
その上で「我々はイスラエルがとるいかなる対抗措置にも参加しない」と述べ、対抗措置に米国が加わることはないと強調した。
また、ジョー・バイデン大統領が13日に行ったイスラエルのネタニヤフ首相との電話会談の中で「イスラエルの防衛への支援を伝えるとともに、事態がエスカレートすることのリスクについて慎重に、かつ戦略的に考慮しなければならないと明確に伝えた」としている。
ちなみに、ドナルド・トランプ前大統領は13日(現地時間)、東部ペンシルベニア州で演説し、イランがイスラエルに対する報復攻撃を行ったことについて「米国が大きな弱さを見せたからだ」と述べて、バイデン政権の姿勢がイランによる攻撃を招いたと批判した。
そのうえでトランプ氏は「我々が政権に就いていればこんなことは起きなかった」と主張し、「我々は強さによって世界に平和を取り戻す。国内外での米国の強さを復活させる」と訴えた。
いま世界の関心は、イスラエルがイランに報復攻撃をするかではなく、いつ、どのような報復攻撃をするかである。
本稿では、イスラエルがイランの核施設への航空攻撃を実施した場合を想定し、イスラエルの航空攻撃の態様について筆者の個人的見解を述べてみたい。
初めに、イスラエルが過去に実施した核施設への軍事攻撃等の事例について述べ、次に筆者が想定するイスラエルのイラン核施設への航空攻撃の態様について述べる。