日本と英国、イタリアが共同開発する次期戦闘機のイメージ図(防衛省のサイトより)

 2024年3月6日付け読売新聞は次のように報じた。

「自民、公明両党は、日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機について、第三国輸出の容認で月内にも合意する方向で検討に入った」

「紛争を助長しないための歯止め策を設けることを条件とする。政府が厳しい安全保障環境を考慮し、求めている高性能な戦闘機の確保に向け、大きな前進となる。複数の政府・与党関係者が明らかにした」

 やっと、次期戦闘機の第三国輸出が決まったというのが筆者の感想である。

 本来は、2023年12月13日に与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム(以下、与党ワーキングチームという)が「防衛装備品の海外移転に関する政府への提言」を取りまとめた時に、次期戦闘機の第三国輸出も容認されると見られていた。

 しかし、国際共同開発する装備品の第三国輸出については公明党が慎重姿勢を崩さず、結論を先送りした経緯がある。

 2024年2月15日、公明党の山口那津男代表は、党本部で開かれた中央幹事会で、国際共同開発した防衛装備完成品の日本からの第三国移転(輸出)について「説明が国民に届いていない。国民に理解を求めることを政府がどう受け止め、努力、説明するかが重要だ。これからの政府の動きを見ながら協議をしていきたい」と語った。

 この山口代表の発言などを受けて岸田文雄首相は、3月5日の参院予算委員会において、公明党の西田実仁参院会長の質問に答える形で、英国、イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機の第三国への輸出をめぐり、日本だけ輸出できなければ、パートナー国としてふさわしくないと国際的に認識され日本の防衛に支障を来すとして、輸出の必要性を述べた。

 岸田首相の答弁の詳細は後述する。

 公明党の山口代表は、同日の記者会見で「(首相は)丁寧に分かりやすく説明しようという姿勢で答弁していた」と評価した。

 以上の過程を経て、次期戦闘機の第三国輸出が容認された。3月内にも岸田首相と山口代表が会談で合意する見通しである。

 次期戦闘機の第三国への輸出解禁が急がれる理由は、日本が共同開発した戦闘機を第三国に輸出するかしないかは、英国およびイタリアの輸出計画に影響する。

 それはまた、GIGO(ジャイゴ=GCAP International Government Organisation)設立条約に基づき3月から始まる日英伊3か国の出資・生産比率(ワークシェア)の本格的交渉に直接影響するからである。

 日英伊3か国の防衛相は2023年12月14日、次期戦闘機の共同開発計画を管理・運営する政府間機関GIGOの設立条約(正式名称は「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立に関する条約」)に署名した。今回の通常国会で承認されれば正式に批准又は受託が決まる。

 GIGOの本部は英国と条約に規定された。また、同日(12月14日)の日英伊防衛相会合において、GIGOの初代首席行政官は日本人、共同事業体(JV)の初代トップはイタリア人とすることで合意された。

 GIGOの設立条約についての詳細は後述する。

 ちなみに、英ロイター紙(2023年3月16日)は次のように報じている。

「日英が開発費の4割ずつ、イタリアが残りを負担する案が有力になりつつある」

「詳細は2024年末までに決定するため、比率は変わる可能性がある。どの部位をどの国が担当するかという作業の分担も今後詰める」

 このように、出資・生産比率(ワークシェア)を巡る3か国間の交渉は、水面下で既に始まっている。

 以下、初めに岸田首相が次期戦闘機の第三国輸出の必要性について述べた3月5日の参院予算委員会での答弁内容について述べる。

 次に次期戦闘機の開発を巡るこれまでの経緯を述べ、次に次期戦闘機の共同開発計画を管理・運営する組織であるGIGOの設立条約について述べ、最後に国際共同開発の課題について述べる。