- 原油価格の低迷が続くなか、産油国で供給を不安定化させかねない不穏な動きが出ている。
- ロシアはウクライナ・ハリコフ州への地上侵攻を開始。イラクでは反米・反イランの指導者が政界に復帰するとの噂があり、サウジアラビア当局が皇太子肝煎りの未来都市建設に反対する住民を殺害したとの報道がある。
- イスラエル・ハマスの停戦交渉にも進展が見られず、依然として地政学リスクがくすぶり続けている。 (JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
5月15日の米WTI原油先物価格(原油価格)は前日比0.61ドル(0.8%)高の1バレル=78.63ドルで取引を終了した。取引開始直後は「需要が悪化する」との懸念から一時76.70ドルと2月下旬以来の安値となったが、その後、買いが優勢となった。
中東情勢の緊迫化が続いているものの、5月に入り、原油価格は1バレル=80ドル割れの水準で推移している。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは6月1日に閣僚級会合の開催を予定している。OPECプラスは昨年11月の会合で、今年1月から有志8カ国が日量220万バレルの自主減産を行うことを決定した。次回会合で、自主減産は年末まで延長することが決まるというのが大方の予想だ。
だが、不協和音も聞こえてくる。
OPEC第2位の原油生産量を誇るイラクのアブドウルガニ石油相は11日、「さらなる減産に同意しない」と発言した。イラクの4月の生産量は日量424万バレルと割当枠を約20万バレル超過しており、OPECの指導の下で枠を遵守する削減計画を策定していた。
翌12日にアブドウルガニ氏は発言を撤回、「OPECが下す決定を遵守する」と火消しに走ったが、市場では「本音が出たのではないか」との憶測が広がっている。