ロシアの原油生産施設。サッカーロッドが夕日に映える(写真:タス=共同)ロシアの原油生産施設。サッカーロッドが夕日に映える(写真:タス=共同)
  • 欧米日がロシアの主要行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除した結果、ロシア企業の多くは中国の銀行に口座を開設、制裁逃れの手段とした。
  • ところが最近、中国の銀行がロシアおよびベラルーシとの取引を停止した。米国からの二次制裁を回避するためだと言われている。
  • ロシアにとってロシア産原油の輸出や原材料・半製品の輸入は生命線。取引停止の影響を改めて整理する。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2022年2月のウクライナ侵攻を受けて、欧米日はロシアの主要行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除した。これを受けてロシアの銀行の9割が、2022年末までに中国の銀行に口座を開設し、その口座を使って決済を行うようになったとされる。ロシアにとって、中国の銀行との取引は、欧米からの制裁逃れの手段になっていた。

 ところが、2月7日、ロシアのビジネス紙ベドモスチは、中国の地銀である浙江長州商業銀行がロシアおよびベラルーシとの一切の取引を停止したと報じた。これ以降、ロシアとの取引を停止する中国の銀行が相次いでいるようだ。

 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官も、この問題がロシアと中国との間の懸念事項になっていると認めている。

Главный для российских импортеров банк Китая остановил все расчеты с РФ(ベドモスチ)

 中国の銀行がロシアとの取引を停止した主な理由は、米国からの二次制裁を回避することにあるようだ。

 米国のジョー・バイデン政権は昨年12月に対ロ制裁の強化を発表した。その際、ロシアの軍需産業と取引しているとみなした第三国の銀行を、米国の金融市場から締め出す措置を強化した。この措置を中国の銀行は警戒したわけだ。

 当然のことだが、中国の銀行はロシアの軍需産業とだけ取引をしているわけではない。

 ロシア以外の国との決済の多くは、貿易決済に占める人民元の割合(図表1)が依然として限定的であるように、米ドルによって行われる。そのため、米国の金融市場から締め出されるわけにはいかない中国の銀行は、ロシアとの取引を停止したのである。

【図表1 中国の貿易に占める人民元決済の割合】

中国の貿易に占める人民元決済の割合(出所)中国人民銀行、中国海関総署

 こうした状況を受けて、ロシアの銀行で唯一、中国で本格的な銀行サービスを提供している政府系金融機関VTBバンクに、ロシアからの口座開設希望が集中する事態となっているようだ。とはいえ、現地拠点の事務処理能力には自ずと限界があるため、VTBバンクに口座が開設されるまで、半年も待たされるケースがあると報じられている。