2025年、ソフトバンクと東京ガスの対戦(平和リース球場)

 2月はプロ野球だけでなく、社会人野球や大学野球など、主要な日本の野球チームにとって「始動の季節」である。多くのチームが、温暖な地域で「キャンプ」を張り、来るべきシーズンインに向けて、チームの練度を高めていく。

 2月後半以降、こうしたチームにとって何より必要なのが「実戦の機会」だ。チームは、練習だけでは強くなれない。実戦で選手が経験を積み、連携を確認することによってチームは一体化し、戦力を高めていく。

実戦経験を積みたい大学・社会人球団のニーズに応えた「薩摩おいどんリーグ」

 少し前までの日本野球はそうではなかった。昭和の時代、野球チームはプロアマにかかわらず試合よりも練習を重視した。

 端的な例を言えば、1903年に早稲田大学(当時は東京専門学校)が、慶應義塾大学に挑戦状をたたきつけたことで始まった「早慶戦」は、のちの東京六大学野球の原点ではあったが、両大学野球部は、年に2試合程度の「早慶戦」のためだけに、1年間練習をしたのだ。昔の日本野球は、試合よりも練習を重視し「練習こそが選手を鍛え、人格を陶冶する」とした。

 対照的に古くから、アメリカでは「野球は試合に出て経験値を積むことで実力がつく」という考えが主流だった。MLBのスプリングトレーニング(春季キャンプ)は、数日間チーム練習をすると、すぐに試合をする。そのためにキャンプはアリゾナ、フロリダに15球団ずつが集結して行われる。

 日本野球でも、近年は、合同練習の時期が短くなり、練習試合など実戦の時間を増やす考えが主流になっている。このためにチームや指導者が、2月後半から頭を悩ませるのが「対戦相手を見つけること」と「球場を手配すること」なのだ。

 2023年から鹿児島県で始まった「薩摩おいどんリーグ」は、そうした野球界のニーズにぴったり合ったイベントだと言える。

 鹿児島県の主要な野球場を舞台に、社会人、クラブチーム、大学、独立リーグ、NPBなどの各チームが、試合を行うというものだ。

 従来、プロ野球と大学野球が試合を行うことは「プロアマ規定」に抵触するとして、禁じられてきたが、2011年3月1日から日本学生野球協会が、「3月と8月に限り」練習試合を行うことを承認した。それもあって、プロと大学の対戦も含むこのイベントが実現したのだ。