VUCA時代に求められる「攻めの成果」
人材育成の目的は、自社が求める成果を出せる人材を育てることです。そのためには、まず自社がどんな成果を求めているのかを明確にする必要があります。
「攻めの成果」を求めるのならZ世代はすでに適した価値観を備えていることになりますが、「守りの成果」を求めるのなら、ミドル層がかつてそうされてきたように、まずは昭和世代の価値観を教え込んだほうがよいかもしれません。
ただ、市場環境はVUCAと言われる変化の激しい時代を迎えています。生成AIの登場などテクノロジーの発展スピードは凄まじく、インターネットの普及によって誰もが世界中とつながることができ、人々の価値観は多様化の一途をたどっています。
そんな予測不能の市場環境において、「守りの成果」だけで生き残っていける会社を想像するのは困難です。市場環境の変化を捉えて「攻めの成果」を出していくことは、ほとんどの会社にとって必要な取り組みとなりつつあります。「攻めの成果」から逆算した場合、昭和世代の価値観のほうこそ刷新されなければなりません。
また、昭和世代の価値観に染まってきた人が多いミドル層を取り巻く環境も、時代の流れとともに変化してきました。専業主婦世帯よりも兼業主婦世帯のほうが多くなり、男性の育休取得が促進されるなど、男性が働き女性は家庭を守るといった古き性別役割分業意識は徐々に緩和されてきています。
さらに、フレックス勤務やテレワークなど柔軟な働き方を選択したり、50代以上で転職する人も珍しくなくなるなど、志向は多様化してきました。時代の流れに鑑みると、Z世代の価値観は決してZ世代だけが備えているものではなく、いまは世代の枠を超えて働き手全体の価値観が刷新されつつあるのです。
育成する側が備えている価値観が最適だったころは、新卒社員が育成する側から社会人として必要な価値観を学び取り自らを変えていく必要がありました。ところが、世代を超えて働き手全体の価値観が刷新されつつある時代には、むしろ育成する側のほうこそ変化が求められます。