企業ではセクハラ罰則強化の動きも出ているが…(写真はイメージ)

(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

職場のセクハラ対策義務化はどこまで効果があるか

 会社の飲み会の席上で取締役の男性からスマホで自撮りした卑猥な写真を見せられて不快な思いをした、という女性社員の話を聞いたことがあります。その取締役は、他の女性社員にも写真を見せて反応を楽しんでいたそうです。

 厚生労働省のハンドブックは、職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)について以下のように説明しています。

〈「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます〉

 この取締役男性の行為は「性的な言動」そのものであり、疑いようもないセクハラです。

 セクハラという言葉が世の中で認知されるようになったのは、いまから30年以上も前。1989年には流行語大賞を受賞しました。現在は職場のセクハラ対策が法律によって義務化されていて、厚生労働省のホームページには事業主が実施しなければならない項目として5つ記載されています。

(1)事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること
(2)相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
(3)相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること
(4)相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
(5)業務体制の整備など、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために必要な措置を講ずること

 ただ書かれている内容を見る限り、本来であれば義務化するまでもなく職場として対応するのが当然のことばかりという印象を受けます。また、法律ではあくまでセクハラへの対応を義務づけているだけで、セクハラそのものを禁止した訳ではありません。どこまでセクハラ防止の効果があるかは疑問です。