働き過ぎを防ぐ労働時間法制の見直しが行われたが・・・

労働時間は減り、休みは増えているが・・・

〈働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革〉

 働き方改革について、厚生労働省のハンドブックにはそう記載されています。課題として挙げられているのは、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「働く方々のニーズの多様化」など。かつてのように人口が増え続けて採用に困らず、社員は会社の意向に合わせてくれる、という時代ではなくなってきているということです。

 そして、労働基準法をはじめとするさまざまな法律が改正されました。進められている施策の最も大きな柱は、働き過ぎを防ぐ労働時間法制の見直しです。年720時間など残業時間の上限を定めたり、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に5日以上取得させるなどの施策が2019年4月から順次施行されています。

 効果は早くも数字に表れています。厚労省発表の『毎月勤労統計調査 令和3年分結果確報の解説』によると、5人以上の事業所の常用雇用者1人当たりの総実労働時間は、2018年に1706時間。それが、施策を開始した2019年には1669時間へと減少しています。コロナ禍発生の影響を差し引く必要があるものの、2020年には1621時間とさらに減少、コロナ禍が少し落ち着き始めた2021年は少し増えたものの、1633時間と2019年を下回る水準です。

 また、年間の出勤日数については、2018年が221日だったのに対し、施策が始まった2019年には216日へと減少。コロナ禍発生の2020年には212日にまで減少し、2021年も212日で2019年を下回る水準です。

 数字を見る限り、労働時間は減り、休みは増えて順調に進んでいますが・・・これらが法律で強制された結果なのが気になります。違反すると、6カ月以下の懲役、30万円以下の罰金など罰則が科せられるのですから各社も必死です。そのため、数字だけが先行して、実際に業務を回している職場ではさまざまな無理が生じている可能性もあります。