社員からの推薦をきっかけに選考を開始する「リファラル採用」が広がっている

(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

「採用力の強化」は会社の存続を左右する最重要課題

 労働市場は慢性的な採用難が続いています。2023年3月の有効求人倍率は前月比でやや下がったものの1.3台。つまり、求職者1人につき求人が1.3件以上ある状況です。失業率も3%を切る低い水準で推移しています。

 そして、人口が減り続けている以上、多少上下することはあったとしても、これからも長期的に採用難の状況が続いていくことが見込まれます。採用力の強化は、会社にとって存続を左右する最重要課題の一つです。

 ところが悩ましいことに、自社の求人を他社より目立たせたり、より広範囲の求職者に訴求しようとすればするほど求人広告費はかさんでいきます。そうなると、財務体力に自信があるごく一部の会社以外は、別の方法を模索するしかありません。

 そこで、多くの会社が目を向けるのが、採用ルートのバリエーションを広げることです。民間の有料人材紹介や、会社が求職者に直接アプローチするダイレクトリクルーティングなど、採用ルートには求人広告や職業安定所以外にもさまざまな種類があります。

 厚生労働省が公表している雇用動向調査によると、2021年に新しく職に就いた人の入職経路は多い順から別掲の表の通りです。

 最も多いのは求人広告経由の入社で、次は職業安定所を押さえて縁故となっています。縁故というと得意先や自社の重役からの紹介など、政略的な事情を優先して採用するコネ採用をイメージしがちですが、そればかりではありません。

 近ごろは、社員からの推薦をきっかけに選考を開始するリファラル採用(referral:紹介・推薦)が広がってきています。コネ採用もリファラル採用も分類上は縁故にくくられますが、コネ採用の場合は基本的に採用することが前提です。面接などが行われたとしても多くは形式的なもので、よほどのことがない限り不合格になることはありません。

 それに対して、リファラル採用の場合は選考が行われます。ただし、選考のきっかけが社員からの推薦なので、書類選考などはパスして最初から人事担当者と面会する機会が設けられるようなことはあります。

 求人広告を見て応募するケースと比べ、その点は求職者にとってメリットです。また、知人から紹介された会社という一定の安心感もあります。しかし、基本的にその後の選考は通常通り行われるため、必ずしも採用に至るとは限りません。