ホンダが20年以上のブランクを経て再び世に問うスペシャリティ2ドアクーペ「プレリュードコンセプト」ホンダが20年以上のブランクを経て再び世に問うスペシャリティ2ドアクーペ「プレリュードコンセプト」(筆者撮影)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

世界的に退潮の一途をたどっている「2ドアクーペ市場」

 11月5日まで一般公開が行われた東京モーターショーあらため「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2023」。モビリティの未来を示すというのがショーの趣旨だったこともあり、出品されたコンセプトモデルもBEV(バッテリーEV)、PHEV(プラグインハイブリッド)、FCEV(燃料電池車)など、ほぼ“オール電化”という様相を呈していた。

 そんな中、異彩を放ったモデルがふたつあった。ホンダの2ドアクーペ「プレリュードコンセプト」(非充電式のハイブリッドカー)とダイハツのオープン2シーター「ビジョンコペン」(純エンジン車)である。共通しているのは実用性より趣味性を重視した“遊びグルマ”という点だ。

 まずはプレリュード。バブル時代、今では死語となっているスペシャリティカーの代名詞となっていたモデルで、中高年の中にはその名を聞いてノスタルジーを覚えたという人も少なくないだろう。

造形がきれいなプレリュードコンセプトのフロントマスク(筆者撮影)

 日本でセールスが最高潮だった第3世代モデルの時代は日産自動車が投入した若年層向け2ドア、通称「アートフォースシルビア」と激しい販売合戦を繰り広げ、「シルビアvsプレリュード戦争」と呼ばれるなど、当時の自動車ブームの盛り上げ役だった。

 このプレリュードコンセプトは、ショーのための単なるワンオフモデルではなく、ホンダは遠くない将来、実際にブランドを現代に蘇らせる予定だという。

 だが、2ドアクーペ市場は世界的に退潮の一途をたどっている。自動車工学の進歩で何の変哲もないファミリーカーが昔のリアルスポーツモデルのようなコーナリングスピードを発揮するようになった結果、2ドア車で残っているのはクルマをぜいたくに使うプレミアムセグメント、あるいはスポーツ性能を前面に押し出した汗臭いモデルくらい。しゃれ感を目的とするスペシャリティカー的な2ドアクーペはすっかり居場所をなくしている。プレリュードにしてもモデル廃止になったのは2001年のことで、ブランクは実に22年だ。