第3世代N-BOXカスタムのフロントビュー(アクセサリー装着車)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

「N-BOX包囲網」は着実に狭まってきている

 日本の自動車市場におけるベストセラーモデルはハイルーフタイプの軽乗用車、ホンダ「N-BOX」である。

 2011年に登場した第1世代が2015年に軽自動車の車名別販売ランキングで首位を奪取して以降、今日に至るまでその座を守り続けている。普通車を含めた総合順位でも現行の第2世代が登場した2017年に首位に立ち、コロナ禍中の2021年を除きトップ。今年上半期も総合首位と、その強さは圧倒的と言っていい。

 8月3日、ホンダはそのN-BOXを今秋フルモデルチェンジすると予告した。すでに同社のホームページではティザーキャンペーン(事前広告)が行われており、内外装の写真を見ることができる。

第3世代N-BOXカスタムのリアビュー(アクセサリー装着車)
第3世代N-BOXの長大な室内スペースは第2世代ゆずりのようだ
第3世代N-BOXカスタムのフロントシート。体の横揺れを受け止めるサイドサポートの張り出しが現行より大きい印象

 詳細な仕様や価格については発表されていないが、その写真を見るかぎり“BOX”の名のとおりエッジの効いた箱型スタイルを第1世代、第2世代から丸ごと踏襲した完全な保守スタイル、キープコンセプト型のフルモデルチェンジである。

 クルマのフルモデルチェンジにはクルマの成り立ちをガラリと変える革新的なものと性格を変えず技術をアップデートさせる保守的なものがあるが、モデル自体の人気が高いこと、消費者のニーズや社会的要請に大きな変化がないことの2点が揃っている時は往々にして後者が選択されることが多い。

 N-BOXは第2世代がモデルライフ末期になっても顧客の支持を失わなかったことから、ハイルーフタイプの軽自動車に関しては消費者のニーズは基本的に変わっておらず、今後も急激な変化は起こらないとホンダはみたのであろう。

第3世代N-BOXのヘッドランプ点灯時。ライト内のテクスチャが面光源となっているあたりに新しさが見て取れる
メーターは現在のアナログから液晶へとアップデートされる

 もっとも、第3世代の戦いはこれまでに比べて厳しいものになる可能性は少なくない。

 最大の競合相手であるダイハツ「タント」は2022年のビッグマイナーチェンジでデザイン重視グレード「カスタム」のフロントフェイスがイカツイ印象に大規模変更され、さらにオフロード風の「ファンクロス」が追加設定されたことで販売が急増した。

 また、第2世代N-BOXが登場した翌年の2018年にフルモデルチェンジされ、N-BOXには及ばないものの販売好調だった第2世代スズキ「スペーシア」も遠からず第3世代に衣替えされるだろう。包囲網は着実に狭まってきているのだ。