- ガソリン価格の高騰が続いている。14週連続の値上がりで全国平均は1リットル当たり183.7円(21日時点)となった。
- 政府はガソリンなどの激変緩和措置を講じてきた。原油高と円安が続くなか、その措置を10月以降も継続する検討に入った。
- ガソリンを使わない電気自動車(EV)の普及が日本で加速することになるのだろうか。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
ガソリン価格を押し上げる複合要因
いったい、ガソリン価格はどこまで上がっていくのだろうか。
8月に入り、毎週のようにテレビやネットのニュースで「ガソリン高」が話題となっている。これは、資源エネルギー庁が原則、毎週月曜日に調査を実施し水曜日の午後2時に調査結果を公表している「給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)」を受けての報道である。
本稿執筆時での直近調査結果である8月23日公表分によると、21日時点では、レギュラーガソリン全国平均価格は1リットル当たり183.7円。14週連続の値上がりで、前の週と比べて1.8円上昇した。
同調査が始まった1990年以降、レギュラーガソリンの最高値は2008年8月の185.1円。仮にこれまでのペースで価格上昇が進めば、次回調査結果(8月30日公表予定)で過去最高値を更新する可能性も出てきた。
軽油が1リットル163.1円、灯油が同122.2円となり、これらも14週連続の値上がりで、石油製品全般で価格の高騰が続いている。
ガソリン価格を押し上げているのは複合的な要因だ。各種報道や自動車業界関係者の声を筆者なりにまとめると、次のような解釈になる。
ベースにあるのは、コロナ禍に入ってからグローバルでの経済活動が停滞したことでガソリンなどの使用量が急減し、それに伴い産油国の供給量が減ったことだ。その後、国や地域によって経済活動が復調するタイミングが違う中、産油国が供給量を調整している。
ロシアのウクライナ侵攻の影響も大きい。原油のみならず、半導体や自動車関連部品などのサプライチェーンが混乱した。ここに、欧州各国のエネルギー安全保障の問題が絡む。
欧州は原油・天然ガスのロシア依存を見直し、風力発電などの再生可能エネルギーや水素の活用へと舵を切っている。再生可能エネルギーを使った水素の地産池消に向けた取り組みや、水素を輸入する大規模な事業計画が着々と進み始めている。
欧州のみならず、こうした「脱原油」の動きはEVの普及とともに各国に広がっており、これが産油国に対する減産圧力となっている。
そして、円安の影響も大きい。