マツダのロータリーエンジンの技術展示。改装前の「マツダミュージアム」(マツダ広島本社工場敷地内)にて(写真:筆者撮影、2018年10月)

マツダの真骨頂であるロータリーエンジンが復活する。多目的車スポーツ車(SUV)「MX-30」の発電機として搭載しハイブリッド化する。ロータリーエンジンの特長や魅力について、生産中止後に10年経ったスポーツカー「RX-8」に試乗しながら考えた。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

まず欧州市場から導入

 マツダのロータリーエンジンが復活する。
 
 2024年3月期第1四半期決算発表で、マツダ常務執行役員の川村修氏が電動化に向けた取り組みについて触れた。その中で、ロータリーエンジンを搭載したプラグインハイブリッド車「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を2023年6月に広島の宇品工場で生産を開始したことを明らかにした。

 このクルマはマツダの電動化に対応するマルチソルーションのひとつとして、まずは欧州市場から導入予定であることも分かった。実車は2023年1月にベルギーで開催されたブリュッセルモーターショーで世界初公開されている。

 気になる日本市場への導入時期については今回、公表されなかった。

「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」に搭載されるロータリーエンジンは「8C」と呼ばれる新設計エンジンだ。「8」とは排気量800㏄を意味するため、過去にマツダが生産したロータリーエンジンの中では総排気量が最も小さい。

 総排気量が小さいのは、クルマの駆動に直接関わるのではなく電動車向けの発電機という位置付けだからだ。こうしたエンジンを発電機とする電動車の手法は「シリーズハイブリッド」と呼ばれ、ほかには日産自動車「e-POWER」やダイハツ工業「e-SMART HYBRID」などがある。これらのクルマの総排気量は1200ccから1500㏄で、ピストンが上下に往復運動する直列ガソリンエンジンのため、エンジンのサイズは一般的な小型車用とほぼ同じだ。

 一方、ロータリーエンジンは“おむすび型”のローターが回転する仕組み。「8C」はローターがひとつのシングルローター式で、エンジン本体のサイズは「e-POWER」用などの直列エンジンと比べてかなり小さい。それでも発電機として十分な出力を発揮することができる。また、クルマ全体の重量バランスの面で優位性もある。

 しかも、「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」は、外部から充電できるプラグインハイブリッド方式としているのが、ほかのシリーズハイブリッド車とは大きく異なる点だ。

 こうしたマツダの電動車へのこだわりと、マツダの真骨頂であるロータリーエンジンが、発電機用だとしても新車搭載用として復活したことで、自動車産業界やマツダファンの間で大きな話題となっている。