原油価格は9月に再び下落するか(写真はイメージ:ロイター/アフロ)
  • 原油価格は7月、1年半ぶりに大幅に上昇し、足元では1バレル=80ドル台前半で推移している。
  • 足元では需給に逼迫(ひっぱく)感があるが、サウジアラビアなどによる減産によるもので持続力はないとの指摘がある。
  • 米国と中国の景況感は悪いままで、肝心の需要が力強く回復する見込みは乏しい。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は8月に入り1バレル=80ドル台前半で推移している。7月は16%近く上昇し、月間ベースで1年半ぶりの大幅な伸びとなった。約3カ月ぶりの高値水準が続いている。

 原油市場は7月上旬まで、需給を巡り様々な材料が交錯していたが、それ以降は「世界の原油市場は今年第3四半期に6四半期ぶりに供給不足になる」との見通しから、投資マネーの「買い」が「売り」を上回る状態となっている。

 まず、供給サイドの動きから見てみたい。

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは昨年11月から世界の原油供給量の2%に当たる日量200万バレルの減産を実施している。さらに今年5月からOPECの主要加盟国が日量116万バレルの自主減産に踏み切っている。

 ロイターの分析によれば、OPECの7月の原油生産量は前月比84万バレル減の日量2734万バレルとなり、1年10カ月ぶりの低水準となった。減産の原因はサウジアラビアの自主減産やナイジェリアの輸出ターミナルにおけるトラブルなどによるものだ。

 ブルームバーグの分析でも、OPECの7月の原油生産量は日量2779万バレルと低水準だった。前月からの減少(日量90万バレル)は2020年以来の大幅なものだった。

 OPECプラスは8月4日に合同閣僚監視委員会を開催し、現行の政策を維持することを確認した。

 市場が注目したのはサウジアラビアが8月3日、現在実施している日量100万バレルの自主減産を9月まで延長するとともに、自主減産のさらなる延長や減産幅拡大の可能性も示唆したことだ。サウジアラビアの発表後、ロシアも9月の原油輸出量を日量30万バレル削減することを表明している。OPECプラスの両雄、特にサウジアラビアは原油価格の下支えに並々ならぬ意欲を示している。