乗り心地、走行性能でライバル車を圧倒するN-BOXの強さ

 さて本題のN-BOXの強さの秘訣だが、4陣営のモデルを乗り比べての印象を一言で言うと、ずばりバランスの良さだ。

第2世代N-BOXカスタムのリアビュー。角型フォルムが特徴(筆者撮影)

 ウェルバランスはターゲットとなる顧客層を広く取るために欠かせない要素で、実用車を作る際にどのメーカーも一番気にするところだ。が、クルマには技術分野の得手不得手やコスト配分などの要素が複雑に絡み合うため、実際にバランスの良いクルマを作り上げるのは並大抵のことではない。

 市場規模50万台をダイハツ、スズキ、ホンダ、日産三菱連合の4陣営で取り合うというのはビジネスとしては悪くないが、ほぼすべてが国内専用モデルであるためパイはできるだけ取りたい。それだけに各陣営とも軽ハイルーフワゴンの作り込みはすさまじい。基本的にはどのモデルを買ってもハズレはないというくらいである。

 そんな激戦区の中でN-BOXはというと、性能、機能を細かくみればライバルに劣っている部分も結構ある。だが、負けている部分があってもそのほとんどはトップに次ぐ次点。そして室内の広さ、車内の明るさや視界の良さ、自然吸気エンジンのパワーなど、いくつかの重要な項目では着実にトップを取っている。軽ハイルーフワゴンでは重要視されない高速巡航性能に至ってはN-BOXだけがまともな性能を持ち合わせていると言っても過言ではなかった。

第2世代N-BOXカスタムのサイドビュー。エキセントリックな仕掛けはないが、スライドドアの間口が非常に広く、乗り降りしやすいのが印象的だった(筆者撮影)
第2世代N-BOXカスタムの室内俯瞰。採光性は抜群に良かった(筆者撮影)

 軽自動車の本分である家族の送迎やお買い物、通勤などの日常使いが主な人や、ホリデーにレジャーに出かけることが多い人、さらに少数派ではあろうが高速道路で長距離移動を行う機会が多い人まで、本当に誰にでも合う。N-BOXを避ける理由として思い浮かぶのは、4陣営中最も地味なデザイン、価格の高さ、そしてそもそもホンダは嫌いというブランドの嗜好くらいのもの。これで強くなければウソというものであろう。

第2世代N-BOX。丸目のヘッドランプデザインをはじめ多くの部分が第3世代のノーマル系に受け継がれる(筆者撮影)

 もう少し具体的に第2世代N-BOXのハードウェアについて述べていこう。

 まずは乗り心地、静粛性についてだが、良路を中低速域で走る場合はびっくりするくらい滑らかで静かな日産ルークスに次ぐ2番手。ところが軽ハイルーフワゴンが苦手とする舗装の荒れた道やハイスピードドライブになるとN-BOXが逆転する。また雨天の中を走った時の静粛性の落ち幅も4陣営のモデルの中で最も小さい。

日産ルークスハイウェイスター(前期型)。傾きの大きなフロントウインドウ、「GT-R」開発陣の手による走りのチューニングなどにより、普通車のようなドライブフィールを持つのが特徴(筆者撮影)

 走行性能はクイックなハンドリングよりも安定性を強く意識したセッティングで、普通車っぽい操縦感覚ではルークスに、軽快でリズミカルなフィールという点ではスズキ・パレットに譲るが、山道における路面へのタイヤの粘り付き感は最も優れており、信頼感は高かった。

 また、軽でこんな走り方をするのは稀であろうが、新東名を最も速い流れに乗ってクルーズしたときの安定感は素晴らしいものがあり、風切り音はダントツに小さく、大型トラックを追い越す際の気流変化による針路の乱れの小ささも軽ハイルーフワゴンの中では唯一無二であった。岡崎東から東名東京までオーバーオールの平均車速が100km/hを超えるドライブを小さいストレスでこなせたのには驚くほかなかった。

 軽自動車の場合あまり意識されない部分だが、エンジンパワーがライバルに対して優越しているのも運転のしやすさに貢献しているように感じられた。

 ロードテスト車のエンジンはターボ過給器を持たない自然吸気だったが、最高出力は43kW(58ps)と、競合モデルがおしなべて38kW(52ps)であるのに対して1割強優越している。実際に運転してみると、発進や中間加速で同じような加速度を得る際のエンジン回転数がライバルに対して明確に低く、アクセルペダルを踏み込めばより強い加速が得られた。

第2世代N-BOXカスタムの0.66リットル自然吸気エンジン。競合の自然吸気エンジンに比べて1割以上高出力(筆者撮影)