どんな走行シーンでも不満の出ない徹底した「ウェルバランス設計」

 室内の広さはカタログ値自体、ライバル中ナンバーワンだが、実際の居住感も非常に良い。後席の見晴らしについては座面の位置が高く設計されているルークスに負けるが、その代わりに足元空間は広大で、同乗者からの不満は皆無だった。

第2世代N-BOXカスタムの後席。後席の足元空間の広さはライバル中最大(筆者撮影)

 室内の収納スペースは数少ない3番手のファクター。カテゴリートップはスペーシア、僅差でルークス。この2モデルの収納スペースの工夫はすさまじいものがあり、長時間ドライブでも室内がほとんど散らからないで済むくらいだった。だが、その2モデルのレベルが高すぎるだけで、決してN-BOXが悪いというわけではない。

スズキ・スペーシアカスタム(前期型)。室内の収納性、シートアレンジの容易さ、軽快なハンドリングなどが特徴(筆者撮影)

 後席への乗り降りのしやすさを大きく左右するスライドドアの開口部の前後長は64cm。クラストップのルークスが実測65cmであるのに対して1cmのビハインドだが、タント、スペーシアの60cmに対しては大きく優越していた。

 タントは助手席の前後ドア間の支柱がドアに仕込まれており、両ドアを開けると支柱に邪魔されずに乗り込めるというウルトラCがある。スペーシアは支柱がN-BOXよりやや後ろ寄りにレイアウトされており、前席の乗降性ではN-BOXに優越している。このように乗り降りのしやすさについては各社特色があり、どれが正解とは言い切れるものではないが、前後席のバランスでN-BOXが好まれていることは間違いないだろう。

ダイハツ・タント(前期型)。全モデルとも助手席側のBピラーが車体でなくスライドドアに仕込まれ、前後ドアを開けると広大な開口部が出現する(筆者撮影)
第2世代N-BOXカスタムの前席。第3世代とほぼ同じイメージであることがわかる

 このように突出した工夫や性能は持ち合わせていないが、どんな走行シーン、天候、使い方でも不満が出ないようなウェルバランス設計が徹底されていることがN-BOXを日本の自動車市場ナンバーワンたらしめた原動力であることは間違いないだろう。

 長距離移動からホリデードライブ、日常使いまでを幅広く網羅した4200kmドライブの中で最も感心させられたのは、軽ハイルーフワゴンとして不満の持ちようがないということだった。

第2世代N-BOXのAピラーのシースルーガラス開口幅はライバル中最大。死角がきわめて少ないのが特徴的だった(筆者撮影)
第3世代N-BOXの前席。ダッシュボードまわりの収納スペースは現行より若干減っている印象。実物はどうか