2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)では空飛ぶクルマの運航が計画されている(写真:つのだよしお/アフロ)

2025年国際博覧会(大阪・関西万博)で運航予定の「空飛ぶクルマ」。スタートアップも大企業も社会実装に向けて準備を進めているが、本格的な実用化には大きな課題がある。航続距離の短さだ。電気自動車(EV)のように完全にバッテリーで駆動する機体の開発が先行しているが、ここにきてエンジンで発電するハイブリッド型が注目を集めている。地上では劣勢のハイブリッドだが、空で有望視される理由とは。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

本当に普及するの?

「空飛ぶクルマは、本当にこれから普及していくのだろうか?」

 そんな疑問を抱いて、6月下旬に千葉県の幕張メッセで開催されたイベント「Japan Drone 2023」「次世代エアモビリティEXPO2023」を取材した。ドローン関連の技術やサービスが数多く出展されたほか、産学官関係者による講演などが行われた。

 筆者は90年代から今でいう「空飛ぶクルマ」に関連する技術などを欧米で取材してきた。80年代には米国連邦航空局(FAA)の双発飛行機操縦免許を米カリフォルニア州で取得しており、「飛ぶこと」に関する基本的な知識を持っていると自負している。

 その観点で昨今の空飛ぶクルマ関連の動向を見ると、まさに今、これから本格的に普及するかどうかの分岐点に立たされているような印象を受ける。空飛ぶクルマの開発に携わる各社が、「空を飛ぶための技術的な現実解」を提案しはじめているからだ。「自由に空を飛びたい」という起業家や投資家の個人的な夢から始まった「実証のための実証」というフェーズは、そろそろ終わりつつある。