ホンダのe-VTOL構想。揚力を得るためのローターと推進用プロペラを完全に分けているのが特徴(筆者撮影)

「空飛ぶクルマ」として紹介されることの多い小型エアモビリティ。クルマが主役のモーターショーから移動体全般を対象とするモビリティショーへとモデルチェンジされた「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2023」では、前回の東京モーターショー2019に比べてエアモビリティの出品が増え、内容面でもより現実的なものが目立った。はたして、クルマが縦横無尽に空を行き来する時代は本当にやってくるのか──。

小型ドローンのサイズを大きくすればいいという話ではない

「ジャパンモビリティショー2023」で有人ドローンを出品した自動車メーカーはスバル、スズキ、ホンダの3社。最も本格的だったのはスバルで、すでに飛行試験を開始している実機にスバルの市販車に寄せたデザインを与えた「スバル エアモビリティ コンセプト」を公開した。ブースの主役級という扱いだったこともあって、来場者の注目度は非常に高かった。

スバルのエアモビリティ コンセプト(写真:Japan Mobility Show事務局)

 ホンダとスズキの展示はいずれも5分の1スケールの模型。スズキは模型のみの展示だったが、その模型は今年6月に機体生産で提携した日本のe-VTOL(電動垂直離着陸機)ベンチャー、スカイドライブ社の次世代機「SD-05スカイドライブ」で、決して架空のものではない。ホンダは自社開発中のe-VTOLの模型とともに、動力に使う試作ガスタービンハイブリッドユニットの実機を披露した。

 自動車メーカー以外の出品も前回に比べて重厚なものが多かった。トヨタ自動車が提携しているアメリカのジョビーアビエーションが実証機「S4」、前出のスカイドライブは3年前に有人飛行試験に成功した1人乗りの実機「SD-03」、ヘリコプター運行を手がける新興企業AirXは中国製ドローン「EH216-S」と、有人飛行タイプの機体が続々とお目見えした。

トヨタ自動車も出資している米ジョビーアビエーションのe-VTOL「S4」。現在有人飛行実験に移行中(筆者撮影)

 エアモビリティは2025年に万国博覧会を開催する大阪府の吉村洋文知事が同万博の目玉のひとつに掲げているということもあって、日本でも注目度は高まっている。それゆえのバラエティ豊かさといえるが、それを実現させる技術に関しては新味が薄く、進歩がほとんど停滞していると言わざるを得なかったのも確かだ。

「小型の電動ドローンはすでに世界で幅広く利用されており、そのサイズを拡大すれば人間の乗れるエアモビリティもすぐに作れるだろうという期待が先行しているというのが今の状況ですが、有人ドローンの実用化は一般にイメージされているよりはるかに難しい」

 会場で説明に立っていた航空機技術者のひとりはこのように語った。