教員不足の源流は小泉改革

氏岡:正規職員の採用が抑制されすぎていることが、教員不足の抜本的な要因であるということがこの研究で明らかになりました。

 正規職員採用抑制に至るには、制度的な問題も多々ありました。

 2000年代、小泉改革で地方分権と規制改革が大々的に行われました。教育関係の法律では、義務教育費国庫負担制度が改正されました。

 義務教育費国庫負担制度とは、教員給与の一部を国庫が負担するというものです。この制度の下、2001年までは正規教員の給与の2分の1は国が負担していました。

 2001年に、まず国庫負担の対象が正規教員のみというルールから、非正規教員にまで広げられました。次に、2004年には総額裁量制が導入されます。総額裁量制とは、国から自治体に渡される教員の人件費用の金額を超えない範囲であれば、教員の種類、給与額、人数を自治体が自由に決めて良いという制度です。

 これらの制度により、自治体は安い給料で雇える非正規教員を、簡単に増やせるようになりました。自治体は少人数指導実現のため、非正規教員の中でも、さらに非常勤教員を大量に採用するようになりました。

 そういった面では、制度改正は良かったのかもしれません。ただ、非正規教員を増やし、正規教員の採用を抑制する方向に働いたことは確かです。

医療現場や役所など、人手不足で崩壊に瀕している現場は公教育だけではない(写真:アフロ)

──氏岡さんは、教員不足に対する文部科学省や各自治体のアプローチについて、「それだけでは問題の改善を見込むのは難しいのが実情である」と書かれていました。

氏岡:昨今の対策は、出たとこ勝負としか言いようがありません。

 例えば、都道府県教育委員会による臨時免許状の授与。これは、教員免許を持つ教員を採用できない場合に限って、例外的に与えられる免許状です。この免許状を取得すると「助教諭」として教壇に立つことができます。

 臨時免許状は教科担任制の中学校・高等学校の教員に多く授与される傾向にあります。美術や技術・家庭の教員の定数が埋まらず、止むを得ず他教科を専門とする教員が臨時免許状を取得して教えている。そんな状態です。これでは教育の質は当然低下します。結局、割を食らうのは子どもたちです。

 ただ、最近、画期的だと感じたことは、2022年の永岡桂子文部科学大臣の発言です。