2018年にOECD(経済協力開発機構)が国際教員指導環境調査を行った。その調査結果によると、日本の中学校では「明らかな解決法が存在しない課題を提示する」教員は16.1%(参加国平均37.5%)、「児童生徒の批判的な思考を促す」教員は24.5%(参加国平均82.2%)だった。
ここから見えてくる現状は、日本の中学校では解決法が提示されている問題を、その解決法を疑うことなく用いて問題を解くということに重きを置く教育がなされているということである。そのような教育で、将来必要とされる人材を育成することができるのか。そんな危機感を抱いた人も少なからずいるのではないだろうか。
具体的に、今後どのような人材が必要とされるのか。そのような人材をいかにして学校で育んでいくのか──。『東大よりも世界に近い学校』(TAC出版)を上梓した日野田直彦氏(武蔵野大学附属千代田高等学校および武蔵野大学中学校・高等学校中高学園長/千代田国際中学校校長)に話を聞いた。(聞き手:関 瑶子、ライター・ビデオクリエイター)
──書籍の冒頭で、「今の学校はもはやオワコンである」と書かれていました。
日野田直彦氏(以下、日野田):「オワコン」というインパクトの強い表現をしていますが、大々的に批判をしたいわけではありません。事実、工場労働者を大量生産するためのシステムとして、近代学校がうまく機能してきたことは確かです。
ところが、昨今では、工場労働者よりもクリエイティビティの高い人材や課題解決がうまい人材のニーズが高まっています。近代学校システムを引き継いだ「今の学校」では、そのような人材を育成することは困難です。
今後、クリエイティビティや課題解決、多様性への理解など様々なことを教えていくことが学校に求められるようになります。また、活発に議論をし、いかにして新しい結論に導いていくのかということも、子どもの頃から繰り返し練習していく必要がある。
遮二無二与えられたプリントを解くだけでは、社会の問題を解決する能力は身に付きません。
Facebook、Amazon、Google、Apple。これらの企業は「こういう社会を作りたい」「こういうサービスがあればみんながハッピーになる」という創業者の想いから始まりました。
隣にいる人の問題を解決することが、世界の問題を解決することにつながります。そのためには、隣にいる人の社会、哲学、背景を理解した上で、彼らの問題を聞き出す能力が必要となります。そういった能力が、今後世界的に求められるようになると思います。
──学校は何のためにあるのかと読者に語りかけています。改めて、学校が存在する意義について教えてください。
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