4段階ある「教員不足」と言われる現状
氏岡:まず一点目として、産休育休を取得する教員数の増加。昨今では、団塊世代の先生が定年を迎え、大量の退職者が出ました。結果、若い正規教員数が増えました。その先生方が結婚して子どもを産むという年齢を迎えているのです。この話は、どの教育委員会を取材しても出てきます。
次に、特別支援学級の数が見込みより増加したという理由。普通学級は4年生までは1クラス35人、5年生以上では1クラス40人まで、と決められています。それに対し、特別支援学級は1クラス8人。1人増えて9人になると、2クラスに分けなければなりません。クラス数の変動の幅が非常に大きいのです。
また、病休の先生が増えたことも教員不足の大きな要因の一つです。文部科学省の発表によると、精神疾患を理由に休職した公立校の教員は、2021年度で5897人。過去最多です。
需要側だけではなく、先生を供給する側にも問題があります。
講師登録名簿というものがあります。これは、例えば正規教員の採用試験で不合格になった人の中で、チャンスがあれば教壇に立ちたいという人が登録しておく名簿です。非正規の臨時教員の多くが、この名簿から選出されます。
しかし、昨今では講師登録者名簿の登録希望者数が減少しています。つまり、臨時教員のなり手が少ない状態なのです。
他にも、臨時教員としての採用が決まっていた人が、別の学校や民間企業に就職してしまう、ということも多く起こっているようです。
──文部科学省以外にも、研究機関で実施した教員不足の実態調査について、書籍内で触れられていました。
氏岡:慶応義塾大学の佐久間亜紀教授と元小学校教員の島﨑直人さんの研究調査ですね。
彼らは、とある県(X県)の教員不足の実態について調査しました。この調査の興味深い点は、教員不足を4段階に分けて調査を実施したということです。
まず、正規教員の定数に対して、正規教員が不足している。これが第1段階です。
次に、第2段階。これは正規教員不足の穴を埋めるため、フルタイムの臨時教員を雇っても穴が埋めきれないという状態です。
第3段階では、穴埋めの担い手をフルタイムからパートタイムの非常勤教員まで広げても確保しきれないという状況に至ります。
そして、最後の第4段階。ここでは、ついに教員不足により授業ができなくなります。
教員不足の取材をしていると、「どこの段階での不足か」という点を教育委員会側から聞かれることがあります。結局、第4段階、授業ができないという最終的な結果しか知ることができません。そして、実際に生徒や保護者が教員不足に気づくのも、第4段階になってからです。
段階で分類することにより、教育現場以外の人が「先生が足りない」状態を可視化したという点で、この研究は非常にわかりやすいものだと感じています。
──結論としては、どの段階で教員が不足していたのでしょうか。