アマゾンの配達員を選ぶおじさんも増えている(写真:Stanislav Kogiku/アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場でしばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、たくましくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

今年も流れる「恋人がサンタクロース」

 今年もサンタは家に来なかった。

 街には松任谷由実の『恋人がサンタクロース』が流れている。しかし、クリスマスにやって来るのは、恋人でもなければサンタクロースでもない。今、プレゼントを家に届けてくれるのは、配送業者の配達員だ。

 とある配送業者で、配達員を募集する説明会を開くと、中高年男性を中心に毎回定員がいっぱいになるという。彼らはサンタになりたいわけではない。配送業者の社員から聞いた話。

「中高年男性からの問い合わせは増えています。中途退職を希望する人や、役職定年を迎えた人などが興味を持っているようです」

 アマゾンをはじめとしたネット通販が盛んになり、配送業の需要は高まるばかり。その配送業が中高年男性に人気の理由は何だろう。

「会社員として、一番苦労したのは人間関係。配送業は一人で完結できて、面倒な対人ストレスを避けられる点がメリットです」

 大都市圏在住で、会社員のかたわらアマゾン配達員の副業をしているWさん(56)はこう話す。Wさんが配達員を始めたのは1年ほど前のことだ。

クリスマスプレゼントで繁忙を極めるアマゾンの配送センター(写真:ロイター/アフロ)