「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」
近年、非正規労働の現場でしばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、たくましくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする。
(若月 澪子:フリーライター)
「食える資格」に群がる中高年
木の葉舞い散る11月最後の日曜日のお昼ごろ。東京・池袋にある立教大学に、緊張した面持ちの中高年男性が次々と吸い込まれていく光景があった。
この日、国家資格「マンション管理士」の試験が全国各地の会場で実施されていた。立教大学は都内の試験会場の一つ。今年の全国の受験者数はおよそ1万4000人。受験者の9割は男性で、およそ7割が40代以上だ。
2年前にマンション管理士の資格を取得したTさん(51)は、かつての試験会場の様子を苦笑しながら振り返る。
マンション管理士は、マンションで起こる困りごとを専門知識で解決する「士業」にあたる。「独立して食っていける」「年を取ってもムリなく働ける」という触れ込みで、中高年男性に人気の資格だ。
Tさんはマンション管理士に加えて、「宅建」「管理業務主任者」「不動産コンサルタント」と、不動産に関する資格を4つ持っている。しかし、Tさんの本業は不動産関係ではない。
さらに、Tさんは「中小企業診断士」「CFP(認定ファイナンシャルプランナー)」の資格も保有。いずれもここ数年で取得した資格ばかりだ。
「50歳を目前に、会社を辞めた後のことを考えると、早めに可能性を探っておきたいというのがありました。それで積極的に資格を取ろうと考えて」
Tさんのように、「セカンドステージの準備をしたい。とりあえず資格だ」と考える中高年は多い。こうした資格試験の会場は、受験者のメインが中高年男性ということがしばしばある。