Yさんが飼い始めたトイプードル。写真はイメージ(写真:アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場でしばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ──。中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、たくましくもどこか悲壮感の漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

 子どもの教育費はブラックホールだ。どんな倹約家でも、子どもの教育費だけは別会計という家庭は多い。金もないのに、なぜか「子どもの将来のため」という名目で、どんどん金を払ってしまう。

「美容院に行くのは1年に1度」の緊縮財政を敷く筆者も、子どもの習い事や塾代、書籍代には恐ろしいくらい課金を続けている。

 まるで、「先のことはわからないけれど、いつか大きな飛躍とともに回収できるだろう」という、日本国債のごとき希望的観測で乱発してしまうのが、子どもの教育費である。

「ウチは高校生の子どもが二人いて、教育費だけで年間300万円くらいかかるんスよ。二番目の子がスポーツ強豪校に推薦で合格して学校の寮に入りまして。寮費や試合の遠征費なんかも含めると、それくらいになっちゃう。でも本人のために、金は惜しみたくない」

 出費を嘆きながらも、自慢のお子さんについてドヤ顔で語るのは、首都圏の郊外に住む、大手製薬会社の営業マンYさん(42)。

 Yさんの年収は1000万円弱。高校無償化などの「特典」の対象外で、税負担も重いため、お得感の少ない層だ。もう一人のお子さんは大学進学を控えており、住宅ローンも返済中。つまり、人生で一番お金がかかる時期にさしかかっている。

「年収は低くないですが、ハッキリ言ってカツカツです。一度、奥さんに預けているクレジットカードの明細を見たら、食費だけでも月15万かかっていて。金はいくらあっても足りません」

 そして、Yさんは家計にゆとりを持たせるため、「教育費ねん出プロジェクト」をぶち上げた。

 まず専業主婦だった奥さんが、コンビニでバイトを始めた。Yさんもコロナ禍でリモートワークが増えたのをいいことに、キャバクラのキッチンの副業をすることにした。時給1500円の仕事である。Yさんの会社は副業禁止だが、個人経営のキャバクラなら、会社にバレないだろうと思ったのだ。

 サラリーマンが客としてではなく、バイトとしてキャバクラへ──。一体どうなってしまうのだろう。