元自衛官は最終的にコンビニバイトに行き着いた(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ。人生100年時代、中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業をはじめるおじさんたちの、逞しくもどこか哀愁漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

娑婆に出た定年自衛官

 ウクライナ・ロシア戦争の影響で、国防に関しての議論が騒がしい。では、自衛隊を卒業した人たちのセカンドステージはどうなっているのだろう。

 自衛官は、民間企業や一般の公務員よりも早く54〜57歳で定年を迎える。年金の受給が開始されるのはまだ先なので、次の仕事を見つけなくてはいけない。

 新卒から定年までずっと自衛隊で働いてきた人の場合、その年月は30年以上になる。30年自衛隊にいた中高年男性が再就職をしようとしても、あまりいい仕事はなく、転職を繰り返す人が多いという。

 地方都市在住のZさん(61)も、56歳の時に自衛隊を退職し、苦労した一人だ。

「私は20歳の頃からずっと自衛隊です。やりたい仕事だったわけではなく、『安定しているから』と親に勧められました。変なことをしない限り、給料とボーナスが自然に上がっていく環境。そんな自分が退職後に世間に出て、大変な目に遭いました」

 Zさんは航空自衛隊で管制官などの現場を経て、30歳以降は事務方の仕事にあたってきた。

 安定した職を律儀に勤め上げた人は、退職後も「安定して給料がもらえる」ことを仕事に求めがちだ。しかし、それが大きな落とし穴になることもある。