スタバでのバイトは人見知りにはハードルが高い(写真:アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ。人生100年時代、中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか哀愁漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

利休はわざとらしいのが嫌い

 日本の「お・も・て・な・し」は、すっかり薄汚れたレガシーになってしまった。東京五輪の一連の談合事件を見ていると、「おもてなし」という言葉が後ろめたいものに思えてくる。

 そもそも「おもてなし」は、世界の中心で叫ぶような言葉なのか。相手にとって心地いいことを、さりげなく行うのがおもてなしなのでは。「感動させよう」という魂胆が見え見えのもてなしに、人は心を動かされない。

 これについては500年くらい前、茶の湯の大成者・千利休が、用意周到な茶人にカマボコでもてなされ、シラケてしまったエピソードが有名だ。

「作為的なもてなしは、感動できしまへん」と、利休が言ったとか言わなかったとか……。

カマボコに白けた千利休(写真:近現代PL/アフロ)

 この利休と似た経営理念を持っていると感じるのが、アメリカ発のスターバックスというカフェだ。スタバには「接客マニュアル」がない。

「じゃあ、どうやって接客しているの?」という話は、しばしば「ホスピタリティ(心からのおもてなし)」という言葉で説明されてきた。要は「自分で考えろ」って話だ。お客さんに「また来たい」と思わせるための必勝マニュアルはなく、どうもてなすかは店員が自分で考えろというのだ。

「相手を感動させる方法は自分で考えて」と言われて、日本で最も困り果てる人種、それはやはり「おじさん」だろう。自分の妻や子どもさえ、感動させるどころか怒らせる、あるいは失望させて終わるおじさんは多い。

 そのおじさんが難易度高めのスタバで、副業をしているという情報をキャッチした。