人見知りおじさん、スタバへ
地方都市に住むAさん(40代)は、地元の総合病院で医療事務を担当している、清潔感のあるおじさんだ。彼は本業のかたわら週に1日、スタバでバイトしている。
外からは店長にしか見えないが、Aさんはれっきとしたスタバのアルバイト店員だ。
「店舗では僕が一番年上です。店長は僕より若い30代の女性。男性はたまに来るエリアマネージャーと大学生の男の子くらいですね。おじさんは僕一人です」
なぜスタバでバイトすることに?
「僕は年収が400万円弱。住宅ローンの返済もあり、収入を増やしたかった。副業に充てられるのは週1日程度。その条件で働けるバイトを探していたら、スタバの『週1~OK』という求人を見つけて」
しかしAさん、趣味のフットサルでも、チームメイトとはほとんど話さないというほどの人見知り。
「家族や親しい友人以外と話すのは苦手です。フットサルでは自分のプレーに酔いしれているだけで、チームメイトには『ナイス!』くらいしか言いません」
日本のおじさんによくいる無口なタイプのAさん、どうやってスタバのホスピタリティに馴染んでいったのだろう。
スタバの新人研修は、レジで「コーヒーください」という客に何と対応するか、店長と新人がディスカッションするところから始まる。この問題の「正解」は用意されておらず、「答えのないセリフ」を自分で絞り出さなければいけない。
シャイな中年Aさんは、当然この課題に面食らった。
「チェーン店ですし、接客用の決まったセリフがあるとばかり思っていたので、とんでもないところに来たと思いました。『コーヒーください』と言われて、何と返すかと聞かれても、初めは何も思いつきませんでした」