「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」
近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ。人生100年時代、中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか哀愁漂う姿をリポートする。
(若月 澪子:フリーライター)
おじさんを酔わせる「いつも見てます!」
日本人が世界を股にかけ活躍か──。
そう見紛うような「ルフィ軍団」のフィリピンからの移送劇。彼らのパイナップルのような髪形を見ていると、開いた口が塞がらない。ルフィらは一連の強盗殺人に加え、数々の特殊詐欺でも市民から金を巻き上げている。
特殊詐欺の被害者は高齢者とは限らない。冷静さと判断力を持ち合わせているはずの中高年男性も餌食になることがある。犯罪者はおじさんの欲望や不安を熟知しており、そこを上手く突いてくるのだ。
地方在住の会社員のBさん(54)は、昨年末に特殊詐欺の被害に遭った。Bさんは妻とお子さん二人の4人家族。年収は650万円で、住宅ローンを抱える、ごく普通のサラリーマンだ。
「自分の会社は55歳になると給料が下がります。ほかの収入も増やさなければと、副業を探していたところで」
Bさんは趣味のソロキャンプ動画をYouTubeにアップし、いずれはそれで稼げたらと考えていた。YouTubeの宣伝のため、Twitterでの発信も行っていた。
2022年10月のある日、そのTwitterにDM(ダイレクトメッセージ)が届く。
「YouTube、いつも見ています」
「私もキャンプ愛好家です(ハート)」
LINEのアイコンの写真は、20~30代とおぼしき女性だった。