「あれからいくつ冬が巡り来たでしょう」

 副業のWさんと専業のXさんは、どちらもバブル時代に就職している。初任給を聞くと、いずれも20万円程度だった。

 もちろん学歴も、サラリーマン時代の仕事内容も、住む場所も、そして契約している配送業者も異なるために単純な比較はできない。しかし、同じような仕事をしていても、現在の収入や生活には、大きな開きがあることがわかる。

 これから中高年世代の格差が深刻化していくと言われている。窮地に陥る原因の一つは、転職が難しい中高年が正社員の仕事を辞めた時に起こる。中高年が転職すると、年収が上がるどころか大幅に下がり、労働条件まで悪化するケースは多い。

 そして、中高年が仕事を辞める理由として最も多いのが、「人間関係」というデータがある。職場の人間関係に悩んだ末にうつ病などを発症し、仕事を辞めざるを得なくなるXさんのようなケースはこれまで散々耳にしてきた。

 職場の人間関係でつまずくことなど、誰にでも起こりうる話だろう。

 Xさんは「今の状況だと、70歳まで働き続けなければいけない」と話す。本当に白いひげのサンタクロースになるまで働くことになるのだ。しかし、Xさんの健康と体力が続かなければ、それも難しいだろう。

 ユーミンの「恋人がサンタクロース」がリリースされたのはバブル経済が始まる前の1980年。WさんもXさんも、クリスマスを心待ちにする少年だったはず。「あれからいくつ冬が巡り来たでしょう」。中高年配達員は、どんな思いでラジオから流れるこの曲を聞いているのだろうか。

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