3月18日、モスクワで開催されたクリミア併合8周年を祝うコンサートにて演説したプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

 ウクライナ軍の予想をはるかに上回る反撃を前に、キエフを攻めあぐんでいるロシア軍。だた、善戦するウクライナ軍を背後から支えているのは、西側諸国の卓抜した諜報能力であるのは間違いない。

手の内をさらされてしまったプーチン

 昨年11月末からアメリカ政府は、ロシアのウクライナ侵攻の可能性を繰り返し主張してきたが、これは情報機関からのインテリジェンスをもとに分析されたものだった。実際、2月24日にロシアは侵攻に踏み切った。

 もっとも、アメリカから「ロシアによる侵攻があるぞ、あるぞ」と大々的に宣伝され、ウクライナ国境付近に駐留させた部隊の規模まで全世界に公表されてしまったプーチン大統領としては、もはや引くに引けない状況に追い込まれていた。あの状態で「侵攻せず」という判断を下すことは、国内に「弱腰」の印象を与えてしまうため、自身の権力基盤に影響する。その意味で言えば、プーチンは侵攻せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのだ。

 そこで改めて注目されるのが、アメリカをはじめとする西側諸国の情報機関の高い能力だ。

 アメリカには世界各国からさまざまな機密情報が集まっている。同盟国や価値観を共有している国々はアメリカのCIA(中央情報局)に情報を提供し、逆に、自国に利害のある情報をもらう、という形で協力関係があるからだ。

 今回アメリカがロシアを追い詰めていったインテリジェンスも、多くの国からの情報が分析された結果だ。ロシアを「仮想敵」として情報活動している国は多く、そういう意味でもロシアはかなり劣勢にあったと言える。