(山田敏弘・国際ジャーナリスト)
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから一週間以上が経過した。
米政府関係者とやり取りすると、ウラジーミル・プーチン大統領の最終目的は、ウクライナに傀儡政権を樹立することだった。その目標に向け、4段階の計画を立てていたという。まず、12時間以内に制空権を確保し、36時間以内に通信を破壊、48時間以内に首都キエフを包囲。そして72時間でウクライナのトップを代える、というものだ。
ただお気づきの通り、すべてにおいてロシアは失敗した。実は今回のロシアの侵攻については、安全保障の専門家らの多くが「失敗」だと認識しており、同時にこれまで「冷静沈着」で「頭のキレる」指導者と一目置いたプーチンの迷走ぶりを驚きをもって見ている。
プーチンにいったい何が起きているのか。
プーチンは「幻想の中」に?
米CIA(中央情報局)のデヴィッド・ペトレイアス元長官は、米CNNの取材に、プーチンは孤立していて、彼の言いなりになる側近らとのやり取りで出来上がってしまった「バブル(幻想)」の中にいるのではないか、と分析している。
イギリスのMI6(秘密情報局)のジョン・サワーズ元長官もオックスフォード大学関連の弁論団体の講演で、「ここ数年で別人になってしまい、今回はまともな判断ができていない」との分析を示した。
プーチンとも直接会ったことがあるというこの世界的なスパイ機関のトップ2人が言うのだから、プーチンの様子はやはり尋常ではないのだろう。
実は、まさにプーチンの異常さを示す映像がロシアから世界に向けて公開されている。ウクライナ侵攻の3日前に行われた、プーチン政権の幹部が集結した安全保障会議の様子である。
特筆すべきは、プーチンと、ロシアの対外諜報機関であるSVR(対外情報局)長官であるセルゲイ・ナルイシキンとのやり取りだ。少し長いが紹介したい。