クラウゼヴィッツの戦争論
プロイセンの軍人クラウゼヴィッツは『戦争論』(Vom Kriege)の中で、戦争を “Der Krieg ist eine blosse Fortsetzung der Politik mit anderen Mitteln.”(「戦争とは他の手段による政治の継続にほかならない」)と定義しました(第1部第1章)。
すなわち、「戦争とはその国の政治的意思を実現するための一つの手段にすぎない」と、戦争の本質を喝破しました。
ウクライナ問題におけるロシアの政治的意思は「ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟阻止」です。
一方、米国の政治的意思は「ロシア軍のウクライナ侵攻阻止」です。
ロシア軍がウクライナに侵攻すれば、米国はウクライナのNATO加盟を認めることになり、ロシアは自国の政治的意思を実現できないことになります。
一方、米国がウクライナのNATO加盟を認めればロシア軍のウクライナ侵攻を正当化することになり、米国は自国の政治的意思を実現できないことになります。
上記より、両国の政治的意思を実現する手段は戦争ではないとの結論に至ります。
これが今でも米露協議が継続しているゆえんであり、筆者は、米露はいつか・どこかで妥協すると予測しています。
油価動静
ご参考までに、ここで油価がこの1年間でどのように推移しているのか概観したいと思います。
米WTIと北海ブレント油価はスポット価格、露ウラル原油は露黒海ノヴォロシースク港出荷FOB価格です。
米WTIと北海ブレントは軽質・スウィート(硫黄分含有量0.5%以下)原油、ウラル原油は中質・サワー(硫黄分含有量1%以上)です。
通常、軽質油は中質油・重質油よりも、スウィート原油はサワーよりも油価は高くなります。
ところが、今年に入り露ウラル原油は米WTIよりも高値となる油価水準が続いており、ロシアにとり有利な油価水準になっています(油価単位:米$/バレル)。

ロシアの2021年国家予算案の想定油価(ウラル原油)はバレル$45.3でしたが、実績は$69。2022年の国家予算案想定油価は$62.2です。
ですから$80を超える現在の油価はロシアにとり望外の油価高水準になり、国庫は潤っていることでしょう。