ウクライナ東部ルハーンシク近くの塹壕でマシンガンを構えるウクライナ兵士(2月7日、写真:AP/アフロ)

プロローグ:
ウクライナ危機を煽る日系マスコミ

 筆者は1月26日、JBpressにロシア軍のウクライナ侵攻はあり得ない旨の論考を発表しました(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68584)。

 皆様ご承知の通り、日系マスコミは、今にでもロシア軍が戦車を先頭にウクライナ国境を越えて、首都キエフに進軍して占領するかのごとき報道を毎日朝から晩まで流しています。

 テレビには識者や軍事専門家と称する人たちが登場して、喜々として危機を煽っています。

 ロシア黒海艦隊がウクライナのオデッサ港沖合に集結して、揚陸艦で戦車や海軍歩兵を上陸させてオデッサ占領を目指しているかのような解説をしている人もいます。

 軍事評論家集団は最近さらにエスカレートして、ロシア軍のウクライナ侵攻日まで予言するようになりました。

 しかし、ロシア正規軍のウクライナ侵攻・キエフ占領は現実問題としてあり得るのでしょうか?

 結論から先に書きます。筆者の結論は前回と同じく、あり得ないと考えます。今後も、米露双方が妥協点を探る外交交渉が続くことでしょう。

 もちろん、ロシア側が要求する東西ドイツ統一後のNATO(北大西洋条約機構)境界線まで戻すことは不可能であり、非現実的あることはロシアのV.プーチン大統領は百も承知のはず。

 落としどころは、米国はウクライナのNATO加盟阻止を約束(密約?)して、ロシアは通常の部隊配置に戻すことだと筆者は考えます。

 ただし、一つだけ懸念される事態はウクライナにおける“盧溝橋事件”を誰かが演出することです。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は元々喜劇俳優です。テレビコメディー番組の中で高校教師から大統領になり、その後本物の大統領になりました。

 行政能力・指導力もなく、既に国民は愛想を尽かし、次回2024年の大統領選挙では当選もおぼつかない人物です。

 この意味では、今最大のリスク要因はウクライナのゼレンスキー大統領その人かもしれません(後述)。